小林薫
サイトウさん
人間に忌み嫌われながらも逞しく生きるゴキブリたちの姿を、実写とアニメーションを合成しながら描く。脚本・監督はこれが第一回作品となる吉田博昭、撮影は三隅研次がそれぞれ担当。
サイトウさんは広告会社に勤めるデザイナー。30歳を越えているがまだ独身で、女っ気はない。趣味はプラモデルづくりと料理で、特に料理に関しては異常に熱心だった。ところが後片付けにはまるで興味がなく、台所には食器があふれ、サイトウさん家はゴキブリたちにとって天国だった。サイトウ家に棲みついているゴキブリは、情熱的な美少女ゴキブリのナオミ、その許婚者でシティボーイのイチロー、スポーツマンのタカシ、ひょうきんな評論家のヤスオ、ナオミの親友のパセリ、ゴキブリ神話に詳しいナオミの祖父、ゴキブリ国の有力者であるイチローの父、イチローの母、教授と呼ばれるゴキブリたちのリーダーなど。その他に人間との戦争に生き残った老兵たちがいた。サイトウ家の食事というとコシヒカリのご飯に、新鮮な肉や魚、ドイツ製のデリカテッセン、ノルウェーのサーディン、ボルドーのワインなど豪華版。ここに棲むゴキブリたちにとって食を求めてさ迷う時代は終わり、生活の質の向上を求める時代に入っていた。ナオミとイチローが結婚を間近に控え、アパートの国(モモコ家)からハンスというゴキブリ青年が逃亡してきた。ナオミは一目でハンスに魅せられてしまう。ハンスはさまざまなトラブルを残して帰国したが、ナオミもその後を追った。ところが、ハンスの国はゴキブリにとって地獄だった。ゴキブリ嫌いのモモコのために罪もない者たちが、“ゴキブリホイホイ”の中で家族の名を叫びながら死んでいく。そんな危機の中でゴキブリの指導者ナイロスは“人間が絶滅した後、ゴキブリの「千年王国」が実現するのでそれまで頑張ろう”と説く、人間による殺戮と飢えの中でナオミとハンスは愛し合った。一方、サイトウ家ではイチローが必死になってナオミの行方を捜しており、決して結婚式を取り止めようとはしなかった。ところが、式の前夜、ひょんなことからモモコとサイトウさんが出逢い、恋仲になった。偶然モモコと共にサイトウ家へ帰国したナオミはイチローと再会し、ショックで一時的に記憶を失った。翌日、イチローとナオミの結婚式は“死の饗宴”となった。ゴキブリ嫌いのモモコがサイトウさんとディナーを終えた後、イチローたちの姿を見つけ、“死のスプレー”を吹きつけたのである。ナオミとイチローは命からがら逃げたが一瞬何が起こったのかわからなかった。教授は「サイトウさんに会ってみよう」と言ったが、翌朝、死体となって発見された。モモコはサイトウさんにとって何年ぶりかの女で、「愛しているならゴキブリをなんとかして」と言われて何もしないわけにはいかない。そしてゴキブリのホロコースト(皆殺し)が始まった。次々に殺されていくゴキブリたちの運命のカギは、「謎のゴキブリ神話」の中に隠されていた。そしてナオミは子供を産み、子孫を残すのだった。
サイトウさん
モモコ
ホソノ夫人
ナオミ
イチロー
ヤスオ
パセリ
タカシ
教授
アロイス
トーラ
ゴスケ
カンタロー
ウンチ
フリッツ
ヨーヘン
司令官
レストランのマスター
イチローの母
イチローの父
神官
ハンス
ナオミの祖父
監督、脚本、製作
キャラクター・デザイン
アニメーション・ディレクター
製作
撮影
音楽
美術
編集
照明
録音
プロデューサー
プロデューサー
主題歌
アニメーション・スーパーバイザー
制作協力
[c]キネマ旬報社