後藤妙子
タエコ
ハードボイルドに魅せられた男が、立派なギャングに成長していく過程を描いた異色作。脚本・監督は後藤和夫、撮影は篠田昇、堀越一哉と全員22歳という若さのスタッフである。(16ミリ)
ある日、自分の女・タエコが以前付き合っていた男・イサヲを訪ねたKは、そこでイサヲの死体を発見した。そして死体の傍に転がっていた拳銃に魅せられたKは死体が握りしめているキーを取り、その拳銃を掴んで、家を飛び出した。拳銃を手に落ち着かぬ毎日を過ごしていたKは、突然、二人の正体不明の男たちの手荒い訪問を受けた。その痛みの中でKは、一人前のギャングになり、その男たちと対決することを決意した。翌日、Kはイサヲの仲間である、ホリとノブとノボルの三人に会い、キーの謎、正体不明の男たちの事が、おぼろげながらも分ってきた。今や事件の全体がはっきりとしたKは、いよいよ、例の正体不明の二人のギャングと対決する決心をした。ホリたちと一緒に男たちを待ち受けるKの全身には、イサヲの死体を前にした時と同じ震えがあった。だが拳銃は、ほとんど自分の手、そのもののように感じられた。Kたちとギャングの勝負は、Kの撃った一発の弾丸で勝負がついた。金を奪い取ったKたちは、身を隠すために猛然と車を走らせた。海岸近くに逃げのびたKたちは、ギャングへの第一歩を踏みしめながら、奇妙な共同生活を始めるのだった……。
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