八城夏子
まゆ子
見知らぬ街で、見知らぬ人々の、次々と襲いかかる暴力に翻弄され、ボロ布のように凌辱されていく女主人に仮託して匿名の暴力に侵される現代人の不安を描く。脚本は「おんな刑務所」の桂千穂と「エロチックな関係」を監督した長谷部安春の共同執筆、監督も同作の長谷部安春、撮影は「時には娼婦のように」の前田米造がそれぞれ担当している。
会社からとった休みも終り、東京へ帰る途中のまゆ子は、山あいの国道を、車で快調に走っていたが、路肩に停まっていた故障中のトラックのかげから逞しい運転手が路上に立ちはだかり、彼女の車を停めた。運転手はオドオドするまゆ子からジャッキを借りて修理を終えると、急に態度を変え、彼女をそばの森に連れ込んで、荒々しく犯して立ち去ってしまう。彼女は涙をおさえながら近くの警察にかけ込むが、刑事は、まゆ子を辱しめるようなことばかりを尋ねるのだった。あまりの恥ずかしさに警察をとびだした彼女を、売春容疑で取調べを受けていたハニイが追ってきて、襲った運転手の居場所を教えると言う。まゆ子はハニイに連れられて行くが、ハニイは彼女のスーツケースを盗んで逃げてしまう。意気消沈して車を走らせていると、今度は車が故障してしまい、ガソリンスタンドの店員に助けられるが、車はすぐには直らず、彼女はモーテルで一夜を過ごすことにした。ところが、このモーテルでも、忍びこんできた中年男に無残に強姦されてしまう。身も心もズタズタにされた彼女は、翌朝、修理の済んだ車を取りに行くと、店員は彼女に法外な料金を請求し、払えない彼女に襲いかかり、油まみれにして凌辱していくのであった。ボロボロになりながらも気を取りなおして車を走らせていると、おかしな中年男に迫られるが、傷つけられながらも、何とか逃げだした彼女は、傷の手当にある病院に入った。しかし、そこでも温厚そうな医師に犯されてしまう。あまりのことに、その町の警察にかけこんだ彼女を刑事たちは弄び始め、途方に暮れた彼女は拳銃を盗って逃げると、車をスタートさせた。刑事たちもまゆ子を追い、パトカーを彼女の車にぶつけてきた。車が断崖にさしかかると、まゆ子は必死にブレーキを踏んだ。彼女の車は崖淵ギリギリで停っていたが、パトカーはそのまま谷底へ転落し、炎を上げていた。まゆ子は、よろめくように車から降り、茫然と谷底を見おろすのであった……。
まゆ子
ハニイ
ホテルの女主人
中都市警察の刑事A
中都市警察の刑事B
中都市警察の刑事C
小都市警察の刑事A
小都市警察の刑事B
ダンプの運転手
ガソリンスタンドの店員
長距離トラックの運転手A
長距離トラックの運転手B
ホテルの男
外車の中年男
医師
監督、脚本
脚本
製作
撮影
音楽
美術
編集
照明
録音
助監督
スチール
制作補
[c]キネマ旬報社