石川晶
ドラム
赤道直下のアフリカ東部海岸(ケニヤ)を一人の黒人少年が帆船とロバで放浪する。東部海岸は、アフリカ内陸と外部世界の接触点として歴史上に重要な地点であるが、以外と未知な地域でもある。黒人が独自に築きあげた海岸文明(ゲディ・ルイン--約三十年前に発掘された)。公用語であるスワヒリ語の発祥地といわれるラム、十七世紀にポルトガル人が築城した三大砦(モン・ハサ、ラム、シイユ)。尚驚くべきことに、この地域より、栄や明の陶磁器が数多く発見され、アフリカとアジアの歴史的な関係の深さに感心させられる。このようにして放浪する少年の目を通じ、知られざるアフリカの裏面を描いていく。また一方では、アフリカ化したアラブ文明圏としての現状を--それは現在、物質文明の洪水の前に、必然的に暴露されてゆくのだが--描いている。作者の西江孝之は単身アフリカに渡り製作した。
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