田中真理
岡野初江
東京の下町にある、村井製作所は、玩具工場の零細企業である。岡野初江は、そこの女工員で、同僚のとも子、チカたちと作業場つづきの村井家の一家に同居している。ある日、集金に出かけた初江は、マンホール工事中の若い男、アパッチと知り合いになった。村井は、妻の竹子が新興宗教に凝るのを幸いにとも子とヨロシクやっているが、チャッカリ屋のとも子はその都度、金をせしめており、村井の独り息子の靖彦にも体を提供して金を稼いでいた。夜は自由時間で、とも子がボーイハントに出かけた後、初江は、アパッチのアパートを訪れ体を与えるのだった。三人の娘の中で一番若いチカは、二人の留守中に靖彦に犯されてしまった。それが原因でチカは工場を辞めてしまった。靖彦は家庭教師のバイトさきの大和田家の美那子夫人の欲求不満の相手役も兼ねていた。ある夜ボーイハントに出かけていたとも子は、大和田氏に呼びとめられ、いっしょにホテルに入った。大和田氏は、マゾ気がありとも子は初めての経験にすっかり毒気を抜かれてしまった。初江は、ポンポン船で暮すのが夢たというアパッチにすっかりいかれていた。初江は金を貯めるためとも子の向うを張って、ボーイハントに精を出すのだった。初江は妊娠している事に気づいた。誰の子か彼女にも判らなかったが、妊娠中にも男に抱かれ、アパッチのために金を稼ぐのだった。その間、売春容疑で警察に捕まったりしたが、どうにか船を買うだけの金を貯めてしまい、工場を辞めてしまった。それから、数ヶ月--。ポンポン船に初江とアパッチと赤ん坊の三人の幸福そうな姿があった。
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