白川和子
弘子
割烹旅館で仲居をしている弘子は、最近、幸夫が冷たくなっているのに気がついた。夫を交通事故で亡くした弘子はその、まだ若く豊満な肉体をもてあまし毎晩悶えていたのだが、その頃、客である幸夫と知り合い、肉体関係をつづけていたのだった。やがて、弘子は幸夫に若い女がいるのを知った。その女は、幸夫の会社の重役の娘道子で、近々、幸夫と結婚するというのだ。弘子は二人の結婚を邪魔すべく道子に近ずいた。短大の先輩といつわり道子の私生活の中へ入りこみ、道子にお姉様と慕われるまでになった。ある日、道子は弘子を割烹に尋ねたが、留守だというので離れの部屋で待つことにした。すると突然、男が道子を襲い、逃げる道子を強姦してしまう。あまりのショックに気を失う道子。勿論、弘子の企みである。一方、幸夫は、同僚の佐竹を弘子に紹介した。数日たって道子から幸夫との結婚通知状が弘子宛に送られて来た。敗北感にうちひしがれる弘子。しかし、再び新しい男への挑戦が始まっていた。
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