荒木一郎
拓
新宿--。二人はほんの少し前に知り合ったばかりだった。ゆき十九歳。二郎二十二歳。二郎はやさしくゆきを抱いた。全てを与えたゆきは少しばかりの痛みを感じたがとても幸せだった。初体験に悔いはなかった。ゆきがいつもの喫茶店で二郎を待っていると、二郎の友人の洋子が来て、二郎がスリの現行犯で捕ったと知らされた。洋子はゆきに優しかった。そして洋子のアパートに行った二人は、自然に互いを求めあうのだった。数日後、例の喫茶店でゆきは、拓に呼びとめられた。「二郎からあんたのことを聞いたよ留置場で」。ゆきは拓にひかれ始めていった。拓はスリだった。そしてゆきもいつの間にか集団スリの片捧をかついでいく。拓の愛は激しかったがゆきは拓を離すまいと思った。ところがある日、拓はゆきを仲間に抱かせた。でも、ゆきは泣かなかった。さびしさのあまり一人でスリを働いていたゆきに、刑事の立川が近ずいた。刑事とも知らずゆきは身の上話をするのだった。ゆきは泳がされ始めていた。やがて拓は再びゆきのもとへ戻った。久々の拓の愛撫はすばらしかった。再びゆきは拓達と仕事に出かけたが、ゆきのせいで尾行されてると知った拓は、立川に「女をだますなんて汚いぜ」とすてぜりふを残して消えた。数日後、拓とゆきはバスの中で仕事をしたが見つかり、拓は追求される。見るに見かねたゆきは、自分一人でやったと自首するのだった。数日後、拓は新宿で立川と会った。「あいつどうしてますか?刑事さん」「あの女まだ一人でやったと言いはっているよ」立川が去った後、拓は次第に笑いがこみあげてきた。
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