荒木一郎
瀬木山雄二
新宿を制するものは日本を制す。美容会の最大勢力谷本学園の女校長・谷本香子は、美容連合会の喜多川と室戸事務局長が新宿に近く新設されるホテルにデラックスな美容室を開設するというニュースを聞き、かねてからの計画を先取りされ地団駄をふんでいた。丁度その頃瀬木山雄二という男が香子を尋ねて来た。住所不定、前歴不明二十八歳。瀬木山は香子にホテル美容室の権利を取ってやるから運動費を出せと言うのである。香子は瀬木山の女を魅きつけるフィーリングと迫力ある弁舌に負け全面的に権利獲得の交渉を依頼した。瀬木山の狙いは谷本王国乗っ取りにありその緒戦に勝った彼は次々と計画を実行していった。まず、室戸をホテル美容室創設に関する陰謀と情事のテープで恐喝し権利書を取り上げた。次に瀬木山は香子の夫谷本理事長に瀬木山が経営して作らせている媚薬入りスプレーを売りつけ、さらに香子と関係し谷本の追い出しをそそのかすのだった。全てが瀬木山の思い通りになり、谷本美容学院の新宿進出が実現した。主任美容師には瀬木山の恋人筒見杏子を任命して。その頃香子が急死した。香子の秘書ますみと情を通じていた谷本が香子の使用していた香水に鉛の粉を入れていたのである。早速谷本美容学院に乗り込んだ瀬木山は谷本を退任させ、杏子を新理事長兼新校長に据えた。ここで瀬木山の野望は完成した。数えきれない女遍歴の中で、最高の美貌と見事な肉体の持ち主の杏子を牛耳りありあまる金で遊蕩に浸れる、これが当然の栄誉と権利だと瀬木山はひとりほくそえんでいた。ところが、ここに突然計画外のことが起きた。杏子が理事待遇の彼を解雇したのである。飼い猫に足をすくわれてしまった……。数日後ある有名な観光地。次の獲物とすべく洋裁学校のバスをつけ廻す瀬木山の姿が見られた。
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