片桐夕子
丸根夕子
人間性を失った頽廃的な現代、その中で、男は、女は何を求めるのか--。男の純愛、女の幸福そして性とは何かを猫く。脚本はいど・あきお、監督は「昼下りの情事 裏窓」の西村昭五郎、撮影は「白い天使の抱擁」の安藤庄平がそれぞれ担当。
住み込みのバー“幸福”の裏窓から、情事を終えたばかりの少女・夕子は一人の青年を見た。その青年・坂崎は長距離便トラックの荷台で無心に口笛を吹いていた。その口笛の音色が何か夕子の心を据え、青年も裏窓に現われた夕子を美しいと思った。坂崎は地方の裕福な家の息子だったが、大学受験失敗後、進学の意欲も失せ、親許との音信も断ち、生活費稼ぎに長距離便トラックのアルバイトをしていたのである。ある日、坂崎は従兄、浩一の訪問を受けた。浩一は坂崎とは反対に快適な学生生活を送っていた。一方、夕子はバーで働きながらも明るさを失わず、いつかは愛する人と幸福な家庭を持つことを夢みていた。ある日、偶然街で坂崎に会い浩一の開くパーティに誘われた。夕子にとって初めての経験だった。そんな二人を見た浩一と恋人の冴子は、二人の間を汚してやりたい欲望にかられるのだった。何とか二人の間を裂こうと浩一は、“幸福”を訪れ強引に夕子と関係を持った。それを知った坂崎は浩一を刺した。傷は全治三カ月程であったが、浩一の意向で内密裏に処理した。この事を知った夕子はますます坂崎を愛するようになっていった。坂崎も純な夕子を求め、その日二人は初めて結ばれた。しかし、この生活も長つづきはしなかった。浩一が自殺し、夕子と坂崎の暖かい生活を見て嫉妬した冴子は、坂崎が浩一を刺した一件を警察に密告したのである。坂崎は逮捕されてしまった。しかし坂崎の愛を得た夕子は、彼の出所を待ちながら、やがて来る二人だけの幸福を夢見るのだった。
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