小川節子
室井匠子
海外旅行ブームにわく香港を舞台に、刺激を求めて香港に蒸発した団地妻を描く。脚本は「昼下りの情事 古都曼陀羅」の中島丈博、監督も同作の小沼勝、撮影は「濡れた荒野を走れ」の山崎善弘がそれぞれ担当。
章子は諸橋と熱い愛の結合に酔いしれていた。だが、夫・浅利住夫との仲は何の変化もなかった。ある日、諸橋は仕事で香港に出張した。時を同じくして章子が姿を消した。妹・匠子の話では香港旅行に出かけたのだと言う。信じられないままに住夫は香港へ飛ぶが、何の手がかりもなかった。そんなある日、香港で知り合った矢吹という男から章子が見つかった、と連絡が入った。だが、その女はまるで章子と瓜二つの春玲という売春婦だった。彼は思わず「章子!」と叫んで春玲を抱いた。やがて矢吹は住夫にアパートを手配し、無理矢理麻薬注射をして、住夫の帰りの飛行機代をも取り上げてしまった。矢吹は、観光にやってくる日本の女をだましては売春婦として売り飛ばしているのだ。カモを捜していた矢吹は、若い日本女を住夫のアパートに連れ込み犯した。すっかり麻薬中毒におち入っていた住夫は、犯されている女を見て愕然とした。匠子ではないか。一瞬、住夫は目ざめた。匠子は、章子と諸橋が香港で心中した、というエア・メールを持っていた。二人は警察病院へ急行したが、そこには変りはてた章子の姿しかなかった。諸橋は章子を置いて逃げたのだ。怒り狂った住夫は傍の拳銃を握りしめた。住夫がアパートに帰ると、矢吹が諸橋を見つけ連れて来ていた。諸橋は章子と死ぬつもりはなく、彼女は住夫にセックスを教わりすぎ、刺激を求めに香港まで来た、と言う。狂った住夫は諸橋の胸に拳銃をつきつけた……。
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