小沢昭一
六さん
源氏鶏太の原作を、「十六歳」の三木克巳が脚色し、「静かな脱獄者」の阿部豊が監督した明朗篇。撮影は「都会の空の用心棒」の横山実。
今日も六さんはリヤカーを引っ張って安井印刷株式会社へ出勤した。六さんはこの工場から出る屑を拾って生活している屑屋だ。妻が亡くなって十年間六さんは無遅刻無欠勤の働き者である。同じようにこの会社へ出入りしている闇屋の女社長広子とは犬猿の間柄だ。六さんには、高校生の高子という娘がある。なんとその恋人が安井印刷社長の御曹子健一君であった。ある日難問題が持ちあがった。六さんが会社に出入りするのはモグリであって、いままでは使丁長が見逃していてくれたのだ。ところがこんどその人が停年退職になり、折原という新しい使丁長は、六さんも広子も出入りしてはならんという命令を出したのだ。困ったのは、六さんと広子。共同の敵のために二人は手を握り合った。その時、人事係長の吉川が、三万円を出せばお出入りを許してやると言って来た。六さんがポンと三万円を投げ出したのはいうまでもない。これで、一人暮らしの広子は六さんに大きく傾きだした。しかし六さんの家に行って、広子はがっかりした。六さんの子供は高子だけでなく武夫、信夫、雪子と小さいのがいたのである。しかし広子とて女、六さんの家を訪れる度にだんだんと子供が可愛くなってくるのだった。こんな時、安井印刷では一千万円の不渡手形をつかませられて、つぶれそうになった。六さんは、それを聞いて屑物から得た金を株式投資に廻してためた一千万円を、安井社長にどうぞ使って下さいと持っていった。--六さんは安井印刷の社長になった。「河野六左衛門」新調の背広を着て、自家用車に乗って表口から出勤するのである。広子は闇屋をやめて六さんと一緒になった。子供達も広子によくなついた。高子と安井君は相変らず仲が良かったが「身分が違うから」と小さくなっているのは安井君の方だった。
六さん
高子
武夫
信夫
神田広子
安井健一
安井社長
西田
東野
北村
折原
吉川
社員A
社員B
社員C
社員D
使丁A
使丁B
守衛
[c]キネマ旬報社