二代目中村鴈治郎
留蔵
「座頭市物語」の犬塚稔のオリジナル・シナリオを「いれずみ乳房」の田坂勝彦が監督した怪談もの。撮影は「裁かれる越前守」の本田平三。
豪商の一人息子又三郎は水茶屋の女お絹と駆落した。持出した金も二人で暮らすうちにすぐなくなった。同じ長屋に住む植木職人の由之助は、お絹の美しさに目がくらみ何かと親切ごかしに世話をするが、みんなお絹が目当てであった。二人が金に困って由之助に相談にきた時、由之助は日頃の希みが達せられると喜んだ。世間知らずの又三郎を、口先三寸でだますのは訳ないことだった。家から金を出させるには又三郎が死んだことにして、金を取ることだと、又三郎を説き伏せた。初めは厭がっていた又三郎も、由之助の言葉に死んだことにして墓に入った。ところが、由之助は最初からお絹が目当てで、人が立去った後の墓を踏み固め、又三郎の親元から届いた金でお絹を口説き落してしまった。必死の努力で墓から這い出した又三郎は、自分が騙されたことを知り、日頃親しくしている駕留の親方留蔵を訪れた。これを聞いた留蔵は、又三郎の墓の中に代りの死体を投げ込み、その翌朝、由之助をおどして金をまきあげ、お絹を連れ去った。お絹は又三郎をみて、幽霊と思いこみ恐怖のあまり失神してしまった。留蔵はお絹の美貌に惑かれ、又三郎へ返すのがおしくなり、又三郎を叩き出してしまった。又三郎は自分の長屋に帰り、幽霊と恐れる由之助に自分が生きていることを明かし、お絹が留蔵に奪われたことを知らせて、前非を悔いた由之助と共に復讐を考えた。翌朝、お絹の着物を取りにやって来た留蔵は又三郎とあい、とうとう又三郎を殺し、その死がいを床下に投げこんで逃れた。このことを知らずに帰って来た由之助は、幽霊の又三郎を生きた又三郎と思い込み、留蔵の家に乗りこんだ、留蔵は匕口で由之助の腹をえぐった。その間に、又三郎の亡霊は執拗にお絹をおびやかした。お絹はとうとう恐怖のため発狂した。留蔵は由之助の死体に重石をしばって川に沈めようとした。だが、その時、無惨な形相の又三郎の亡霊が現われた。驚いた留蔵は、逃げようとしたはずみに、縄に足をひっかけ、死体もろとも重石にひかれて水中に消えた。狂ったお絹は、かつて又三郎と暮らした長屋へもどり首を吊った。
留蔵
又三郎
お絹
由之助
お春
お菅
お増
お麻
お加代
講中の宰領
寅吉
八五郎
九助
辰造
丑八
お清
お苫
お梅