小林桂樹
猪戸純平
「名もなく貧しく美しく」の脚本・監督の松山善三が、これについで、脚本・監督した風刺コメディ。撮影は「氷壁」で三浦賞を受賞した村井博が、大映を離れて、東京映画と契約第一回作品。
生活必需品を全て身につけ、ぶらりぶらぶら全国を歩く男--その男の名は猪戸純平。だが、彼は乞食でもルンペンでもない。自由業である。初夏のある日、純平は九州八幡の駅前食堂に入った。が、うどんの中に蝿が入っていたので因縁をつけたところ、店の親爺から無銭飲食犯とみられ警察へ突き出された。すると、そこで原爆罹災者と偽り詐欺行脚中の桑田駒子に会い、一緒に釈放された。二人は下関へ出た。その晩、駒子は睡眠薬入り焼酎を純平に振舞って酔い潰し八万円を失敬してドロン。翌朝、驚いた純平が駅へ駈けつけると、武男とマリ子という兄妹を拾う破目になった。無一文のうえに大きな荷物を背負い込んだ純平だが、どうも仕様がない。ある時は乞食に化け、ある時は本能のカケラを満たし、ある時は無茶な乱闘を繰り展げながら、山口、室津、岩国、三原、尾道、倉敷、岡山を通り大阪へ出た。大阪ではイザリ車を作って法善寺横丁、千日前、心斎橋へと繰り出したが一銭の身入りもなかった。が、千日前で新宮行の切符の入った財布を拾い、那智の滝、名物の火祭りを見物、那智神社に参詣後、熊野から貨物列車に乗り浜松へ出た。が、突然、マリ子が高熱のため昏倒。あわてた純平は方々の医者へ駈け込んだが純平の見なりのため、誰も相手にしてくれない。ヤキモキしてるところへ突如駒子が現われ彼女の助力でマリ子は入院出来た。マリ子の病気も治り純平は東京へやって来た。子供達を伯母の許へとどけるために--。が、二人はすぐに戻って来てしまった。有楽町で駒子に逢った。彼女は「人間の自由は人間の世界にこそあるのだ」と諭し、彼らは結婚した。そして純平は、サラリーマンとして再出発をするのだった。
猪戸純平
桑田駒子
小宮山武男
小宮山マリ子
伊賀の次郎吉
小母さん
キンコンカンちゃん
ニコヨン
検札の車掌
鉄五郎
女房
刑事A
刑事B
料亭「瓢」の女中
巡査
浄満寺の住職
ストリップ小屋の客
岡山の百姓
料亭「吉兆」の板前
千日前の地回りA
千日前の地回りB
水産庁の役人
愛生医院の先生
おでん屋の親爺
スリの刑事
下関書店々主
大衆食堂の女
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