萬屋錦之介
関の弥太郎
長谷川伸の同名小説より「虹をつかむ踊子」の成澤昌茂が脚色、山下耕作が監督した人情もの。撮影は「真田風雲録」の古谷伸。
常陸の国結城在、関本に生れた、若くていなせな弥太ッぺは、十年前両親に死に別れ、祭りの晩にはぐれた当時八つの妹お糸を探して旅を続けていた。途中、甲州街道吉野の宿で、旅の娘お小夜が溺れかかっているのを救ったが、お糸のためにと肌み離さず持っていた五十両の大金を、お小夜の父和吉にすり盗られた。がその和吉も箱田の森介にきられ、お小夜を旅篭“沢井屋”に届けてくれと頼みながら息をひきとった。沢井屋の女主人お金は、緑もゆかりもない子供と拒絶したが、十三年前誘拐された娘の落し子と知って驚喜した。それから十年弥太ッぺは、お糸の病死を賭博田毎の才兵衛から知らされ、すさんだ生活に身をおとし、飯岡の助五郎一家の客人となっていた。笹川の繁蔵一家との喧嘩に加わった弥太ッぺは十両が縁で兄弟分の契を結んだ森かつて五介の姿をみつけた。一緒に大綱楼にくりこんだ弥太ッぺに、才兵衛は、お小夜の恩人を探してくれるよう依頼されたと話した。が弥太ッぺは、黙秘した。森介と別れた弥太ッぺは、吉野宿の祭礼でお小夜らしい娘を見つけてハッとした。沢井屋の裏手で、夕闇の中にお小夜の姿を認めて身じろぎもできない、純心な弥太ッぺなのだ。才兵衛から話を聞いた森介は、お金の前に自分がお小夜の恩人だと名のり出た。そしてお小夜を嫁にときり出した。恩人と信じこむお金も、あまりのたけだけしい森介に当惑する毎日だった。腕ずくでもと血迷う森介の噂を聞いてかけつけた、弥太ッぺは、宝物のように大切にしてきたお小夜のために、兄弟分の縁を切って斬り捨てた。そして森介が詐し取った四五両の金を返す弥太ッぺをじっとみつめるお小夜の脳裏に、十年前の弥太ッぺの面影がよみがえって来た。“待って下さい”と追いすがるお小夜をあとに、かねて約束の助五郎一家との果し合いをせかせる、暮六つの鐘の音が鳴り響いた。一本松へといそぐ弥太ッぺの姿も心もちか、淋しい日暮れであった。
関の弥太郎
箱田の森介
お小夜
お小夜の子供時代
堺の和吉
沢井屋お金
銀太郎
おすみ
吾作
おてる
田毎の才兵衛
お由良
飯岡の助五郎
神楽獅子の大八
小神楽の大七
三崎の辰五郎
平木の豆鉄
八木村の又吉
高浜の源次
笹川の繁蔵
清滝の佐吉
外川の半コ
多胡の赤太郎
夏目の新助
勢力の留五郎
桂川の茶店の爺
もよ
和尚
多摩屋の遊女A
多摩屋の遊女B
多摩屋の遊女C
多摩屋の妓夫
大網楼の女中
大網楼・番頭
たぬきの親爺
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