萬屋錦之介
サメ
真継伸彦の同名小説を「宮本武蔵 一乗寺の決闘」の鈴木尚之が脚色「五番町夕霧楼(1963)」の田坂具隆が監督した文芸もの。撮影もコンビの飯村雅彦。
越前海岸の或る村に、父無し子として生れ、育った少年サメは、鮫を獲って母子二人の貧しい生活を送っていた。しかし、母も土一揆のあおりをくって死別。この日から、サメは憧れの京への旅へ出た。最初に手をひいたのは鋳物師だった。が、この老人も折からの大飢饉で、途中餓死してしまった。京への道案内を失ったサメは、ひもじさに耐えられず、人肉を食べ、女の欲望をまるだしにした三十女に連れられて京へ来た。だが京は、応仁の乱以後の混乱で巷には難民があふれて、死臭がただよっていた。サメは隻腕の盗賊四郎左に拾われ、食物にありつけた。「生きる為には、何でもやる」四郎左の言葉は、少年サメの心に強く響いた。窃盗傷害、殺人と、サメは、男に成長していった。がサメは、次第に指導者としての、四郎左に憎悪と反感をもち、ついに四郎左は、サメの兇刀に倒れた。自信を持ったサメは、侍を志して合戦に加わった。しかし、下賤の出身で誰からも相手にされないと知ると、サメは、戦場で知り合った筑紫の源次らと徒党を組み、京へ戻って掠奪を始めた。源次のやり方は、四郎左に増して、残忍であった。金持、貴族を専門に狙い、女から肌を奪って殺す。衝動的な野獣の暴虐だった。或る夜、尼寺を襲ったサメは、若い尼僧の夜目にも白い裸身に、哄笑を浴びせた。だが、尼僧の成行きを待つ如く静かな面のもつ、異様な美しさに、今迄一度も体験しない恐ろしさを感じた。貧しさゆえに刀で生きようとした、サメの心に、あの見玉尼と呼ばれる、仏尼は、美しい人間の心をよみがえらせたのだ。サメは、見玉尼の静かな面を思って、泣いた。
サメ
サメの母
見玉尼
鋳物師
越中の女
願阿弥
四郎左
筑紫の源次
老父
息子
田舎侍
田舎侍
名主
下衆
騎馬役人
浜の男
浜の男
浜の女
浜の衆
浜の衆
浜の衆
役人
面の女
代官所の門番
代官所の門番
部落の見張人
河原の老婆
刀鍛治
貴人
被衣の女
伊勢貞親
富樫の侍大将
西軍の足軽
西軍の足軽
西軍の武将
鍋かぶり日親
富樫の足軽後に野盗
富樫の足軽後に野盗
上ろう
老尼
時宗の僧
隣家の老婆
山人
下人
閣僚A
閣僚B
閣僚C
監督
原作
製作
撮影
音楽
美術
編集
照明
録音
企画
企画
企画
スチル
脚色
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