安藤昇
安藤昇
元安藤組組長安藤昇の自叙伝を「牝蜂」の湯浅浪男が脚色・監督した暴力団の実態を描いたもの。撮影もコンビの岡田三八雄。
二十年前、特攻隊員として死の直前にあった安藤昇は、終戦をむかえ、虚脱した心で荒廃した東京に舞いもどった。そんな彼に再び大学へ帰る決心をさせたのは戦友椎名の「きっと今に俺たちの若い力が必要になる--」という言葉であった。だが世の中は混乱が続き、暴力がのさばる一方であった。こうした社会に怒りを感じた安藤は「暴力には暴力で--」と大学を中退し、やくざの世界に飛び込んでいった。やがてインテリやくざと呼ばれる安藤は、持ち前の度胸と腕っぷしで、めきめきと腕をあげ、渋谷一帯を縄張りとする安藤組が誕生した。銀座の顔役堂本をキャバレーで切りつけたのもこの頃だった。そんなある日、安藤は街で外国人の祭に顔を切られた。以前安藤が、先勝国を笠にきて暴れ廻っている彼らの一味を叩ききったことに対する意趣返しであった。安藤は兄弟分の三宅の必死のとりなしにもかかわらず、祭を捜しだすと、廃人同様になるまでメッタ切りにした。そんなうち、安藤はどんどん勢力を拡げ、東興業という会社をたて、組員も百名を越すほどにふくれあがった。そんな時、安藤は日頃の顔なじみ元木から債権の取り立てを頼まれた。ただ同行するだけという条件のもとに仕事を引受けた安藤だったが、取り立ての相手鬼頭のあまりの悪辣さに腹をたて、子分と共に鬼頭のもとになぐりこんだ。直ちに安藤は主犯として逮捕され、何も知らない彼の妻昌子や子供たちは悲しみのどん底につきおとされた。六年後安藤は仮出所した。だが、このころ安藤は、つまらぬ利権争いで子分たちが次々と死んでいくことに疑問を感じ始めていた。そんな折も折、彼の親友椎名が「自分の間違いを潔く認めて、悔い改めるかどうかで人間の価値が決まるのではないだろうか?」と彼に忠告した。安藤の心は決った。三十九年十二月九日、安藤組は解散した。
安藤昇
妻昌子
椎名良隆
妻
島崎始
安積一郎
尾形敬
西川健次
石田吾郎
町田雄一
井上明
三宅照二
元木竜二
司法主任
岡部刑事
安藤の母親
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