舟木一夫
木塚正彦
「こころの山脈」の千葉茂樹と「赤い靴とろくでなし」の山内亮一が共同でシナリオを執筆「四つの恋の物語(1966)」の西河勝巳が監督した歌謡もの。撮影は「赤い谷間の決闘」の高村倉太郎。
愛車ワゴンを弁護士志望の青年木場正彦にぶつけた宇月美沙緒は、正彦を乗せ送り届ける途中、車をチンピラにかこまれた。正彦の機転でその場をのがれた美沙緒であったが、正彦はチンピラの根城“黒猫”にとじこめられた。そこには、新聞社編集長広瀬がヤクザに痛めつけられていた。だが正彦はチンピラの中に小学生時代の級友吉川一也を見て驚ろいた。翌日広瀬の死は報じられ、一也は犯人とされた。事件に不蕃を抱いた正彦は、刑事田宮を訪ね、この事件の弁護をひき受けることを約束した。広瀬は赤新聞の編集長で、広告代をとりたて、あくどい事をしていた。その取立てを一也の兄貴分野島がやっていたのだ。正彦は“黒猫”で宇月産業の溝口を見たことを思い出した。宇月産業は美沙緒の父の会社であった。正彦は美沙緒の上に暗い影がかかることを恐れた。一也の恋人町子は、自分の前で更生を誓った一也が殺人を犯すとは思えなかった。そして、当夜町子は“黒猫”の路地から一の瀬がオタオタと出て来たのを目撃した人がいると正彦に告げた。その頃田宮は、広瀬の傷の鑑定から、犯人は左利きであると告げた。一也は右利きであり、刃物も一也のものとは違っている。そして、広瀬は宇月産業にも顔を出していたという。溝口、野島の線が浮かんで来た。一の瀬が殺人事件に関係あると知り、宇月と美沙緒は狼狽した。美沙緒は一の瀬と婚約していたのだ。一方町子は郷里の三宅島へ母あてに五十万円送られて来たことを不蕃に思い、確かめるために島へ帰った。すぐ後を追った正彦は、岸壁に美沙緒を見て、何かうれしさを感じた。現金封筒の筆跡は一也の字であった。一也が大金をもっているはずがない。一也は犯人の身替りとなって五十万を手にしたのだ。正彦は溝口、野島、一の瀬の三人の内の一人だと決めた。正彦から事の次第を聞いた田宮は、一也を訪ね、証拠を並べて追求した。野島は左利きであった。宇月邸を訪ねた正彦は、宇月と美沙緒の前で、広瀬が宇月産業の汚職事件のネタを握ったため、溝口が野島に殺しを命じたのだ、そして元締は宇月だと語った。無罪となった一也は、町子と一緒に再出発した。置手紙をして、ヨーロッパに発った美沙緒の船を見送り、正彦の心にさびしさがつきあげた。
木塚正彦
吉田一也
宇月美沙緒
宇月英治
浅沼町子
小島信次郎
一の瀬徹
野島鉄二
広瀬吾一
溝口
田宮刑事
高田刑事
直美
町子の祖父
キク
町子の妹
町子の弟
士井郁子
法律事務所の弁護士・片岡
法律事務所の書生
宇月産業の女秘書
宇月産業の受付嬢
バーテン
部落の漁師たち
プロダクションの仲間A
プロダクションの仲間B
プロダクションの仲間C
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