牧野周一
伊勢屋宗右衛門
「喜劇 駅前音頭」の新井一と椿澄夫が共同でシナリオを執筆。「じゃじゃ馬ならし」の杉江敏男が監督した喜劇。「バンコックの夜」の完倉泰一が撮影。
五月の鯉の吹き流し、といわれるような至って気のいい連中が住むなめくじ長屋が舞台である。大家伊勢屋宗右衛門の道楽息子伸二郎は吉原通い、果ては付け馬を連れてくる始末。ついには勘当となる。長屋の連中が宗右衛門の還暦を祝っている一方、間抜けな泥棒が清元師匠お綱の家へ入るが、反対に財布をとられてしまった。長屋にはほかに、無職の文吉、大工の八五郎、占者の呑海、水前兄弟などがいる。文吉は幽霊のでるへっついを貰いうけて、二十両という大金を見つけたが、その金が心残りで毎晩出るという幽霊とサイコロをふり、勝って金をせしめた。宗右衛門は大工道具を質に入れて、日中寝ている八五郎をみかねて、嫁の世話をした。花嫁の千代女は御殿下りのため、言葉がいとも丁寧。しかしがさつな八五郎とは、よく息があうのだった。また八百屋の辰造の女房は夫婦喧嘩をして、呑海のところへかけ込み、知恵を授ってきて、夫をためした。そんな長屋の連中をよそに、水前兄弟、実は太郎と許嫁の千鳥、は千鳥の父の仇飽沢源内を探し歩いた。美しい男姿の次郎(千鳥)を魚屋熊吉の娘かよが、ひそかに恋していた。ある日宗右衛門の家の近所で、火事が出た。その時ひょっこり顔を出した伸二郎は、桶屋の銀作の機転で、何とか勘当をとかれた。火事の時のお礼にと、長屋の男連中は大山詣りに招かれた。旅篭で文吉は酔ってからみ、一同に丸坊主にされてしまった。怒った文吉はひと足先に帰り、芝居をうって女房たちの頭を丸めさせた。大山神社の祭がやってきた。その前夜。ついに水前兄弟は目ざす仇を見つけ、蟇油の三浪人の前に立った。本懐を遂げた太郎と千鳥は晴れて夫婦になった。翌日は本祭、だしの上では千鳥が歌い長屋の連中が、陽気に舞っていた。
伊勢屋宗右衛門
伊勢屋伸二郎
伊勢屋お米
伊勢屋与太郎
棺桶屋銀作
棺桶屋おこま
八百屋辰造
八百屋みつ
のりやお勘婆ア
小間物屋歌吉
炭屋馬さん
炭屋かね
大工八五郎
大工千代女
魚屋おせつ
魚屋かよ
無職文吉
占者呑海
清元師匠お綱
大石千鳥
大石太郎
飽沢源内
飽沢平内
飽沢居内
付け馬竹太
付け馬久吉
岡っ引憲太
下っ引憲次
へっつい幽霊
泥棒
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