田宮二郎
佃大四郎
「女犯破戒」の下飯坂菊馬がシナリオを執筆。監督は「ザ・ガードマン 東京忍者部隊」の弓削太郎が担当したアクションもの。撮影は「雁(1966)」の宗川信夫。
稲垣拳の一枚看板、ライト級佃大四郎は、一カ月後にタイトルマッチ挑戦を控えているにも拘らず、大荒れに荒れていた。佃には、クラブ・フロリダの歌手、梨香という恋人がいたが、梨香の弟がボクシングで死亡してから、二人の間に愛しあいながらもどうしようもない亀裂が生じていたからだ。そんな頃、新庄徹が突然稲垣拳に姿を現した。三年前タイトルマッチに敗れた新庄は、稲垣の一人娘秋子との婚約も破棄して、日本を離れていたのだった。そして翌日、新庄は佃のトレイナーを申し出た。一度飛び出した者を優しく迎えてくれる稲垣と秋子への恩義もさることながら、新庄は自分が果たせなかった夢を、佃に賭けたのだった。しかし、荒んだ佃の心に新庄の好意は通ぜず、かえって喰ってかかる始末だった。そんなある日、佃は気晴らしにズべ公淳子と一夜を共にした。淳子は稲垣拳のライバル山岸拳の会長の娘で、佃の敗北を導くための狡猾な罠だった。さらに山岸は、ゴロツキ新聞記者野崎を使い、自分の配下暴力団花井組の組長花井の情婦雪絵と、佃との濡れ場を演出し、佃に八百長を迫るのだった。漸く目を覚ました佃は、新庄の忍耐強い好指導に体調を日増しに回復していった。しかしそれも束の間、試合の数日前に、花井は雪絵とのことから佃を呼びだし、山岸の脅迫に応じないとみるや、佃の右手を石でなぐりつぶしてしまった。赤くはれあがった右手をたずさえてリングに上った佃の体に、チャンピオン後藤のパンチは、容赦なく命中し、佃の敗戦は時間の問題だった。ロープに追いつめられた佃が、最後の力をふりしぼり、初めて右手を出した。次の瞬間、後藤はマットに沈んだ。カウント10の声を聞くや、佃も深々とマットに沈んだ。数時間後、意識をとり戻した佃の右手にそっとおかれた手、まぎれもなく梨香の手だった。
佃大四郎
新庄徹
稲垣
娘秋子
宮本梨香
山岸
娘淳子
花井
雪絵
野崎
並木
吉男
勝
三郎
春日
テツ
タツ
かおる
洋子
後藤
タクシー運転手
隣の女
刑事A
刑事B
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