総監督
全国高校野球選手権大会の大会五十回を記念して企画、製作された長篇記録映画。四年前、「東京オリンピック」で話題をなげた市川崑が総監督として、甲子園を目標に励む球児や晴れの舞台で活躍する選手たちを、“青春”をテーマに描いたもの。
ストーリー
プロローグ=大鉄傘に風の音が冷たい冬の甲子園球場には、人影一つない。この風景からはあの烈日の下にエネルギーを爆発させる高校生の姿を想像することは困難だ。歴史=大正四年八月十六日、第一回全国中等学校優勝野球大会は、豊中球場に十校を迎え紋付羽織袴の村山朝日新聞社長の始球式で、熱戦の火蓋をきった。優勝校京都二中。大正十三年、甲子園球場完成。昭和八年、第十九回準優勝戦、中京対明石の四時間五十五分に及ぶ激突は、大会史の最高峰に位置する一戦だった。死闘二十五合、中京は明石を1対0でやぶり、続く松山商業との優勝戦にも勝ち、輝く三年連続優勝の偉業を成し遂げた。昭和二十三年その名称が、全国高等学校野球選手権大会と改められた。青春の歴史は、激動の日本を貫いて、細くだが力強く受継がれ、本年八月九日、第五十回を迎えたのである。トレーニング=厳寒の北国。あかぎれの手、かじかんだ手がボールをつかみ、バットを握る。群立する煙突、スモッグに覆われた都会でも、練習に励む野球部員の姿がある。やがて春。硬質の打球音が響いてきた。暮色の漂うグラウンドで、練習が黙々と続けられる。挨まみれのユニホームと顔。苛酷なまでに厳しいノックの雨。カッとまぶしい南国沖縄。ジェット機の騒音の下、ここでも精魂をこめた猛練習が行なわれている。地区予選=七月、各地一斉に予選が始まった。その出場校は、二千四百六十校に及び、各都道府県と沖縄から四十八代表校が決った。そして対戦相手を抽選する大阪フェスティバルホールは、組合せが決まる度ごとにどよめく。甲子園球場=スタンドを埋めた大観衆。やがて割れるような拍手が起り、大観衆が揺れ動く。選手入場である。夢にまでみた甲子園。その土を踏む日焼けした顔は、感激のためか緊張してみえる。続いて、国旗、大会旗の掲揚、国歌演奏。舞上る数百羽の鳩。一転して、解体された戦時中の甲子園球場。戦死した野球人の面影。第一球をワインドアップする投手。享栄対倉敷工、かくして今大会四十七試合の熱戦の幕が切って落された。投手戦あり打撃戦あり、そして延長戦もある。青春をぶっつけた白熱の試合が展開し、選手たちは能力の限界に挑んだ。観衆から球場係員、そして街頭のテレビに群がる人々まで、選手の一球一打を追っている。やがて沖縄代表の興南対大阪代表の興国の準決勝戦から、興国対静岡商業の決勝戦へ。球趣は、盛上った。真剣そのものの選手たち、優勝への緊迫感が、回を追うごとに高まる。観衆のどよめきが拍手に変った。初出場興国高校が1対0で優勝の栄冠を勝ちとった一瞬である。
スタッフ
脚本
井手雅人
脚本
白坂依志夫
脚本
伊藤清
脚本
谷川俊太郎
ナレーター
芥川比呂志
製作
衣奈多喜男
製作
菅野長吉
製作総指揮
広岡知男
撮影監督
植松永吉
音楽監督
山本直純
編集
高木正雄
録音
大橋鉄矢
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作品データ
[c]キネマ旬報社