水島道太郎
眞田文吉
「右門捕物帳 謎の血文字の竹中美弘に井内久が協力して製作に当たり、短編の演出家だった浅野辰雄と須崎勝弥が共同でシナリオを書いている。監督には「上海帰りのリル」の島耕二が当たり、撮影は「右門捕物帳 謎の血文字の河崎喜久三が担当している。出演者陣は、「上海帰りのリル」の水島道太郎と「霧の夜の兇弾」の浜田百合子、新東宝ニュー・フェイスの南寿美子、ラジオ・ドラマの富田仲次郎の他に、片山明彦、中村是好、潮万太郎などで、レコード歌手三條町子と津村謙が特別出演をしている。
アル中で生活意欲を失った楽士の眞田文吉は、弟子の島木哲夫の親切な心使いで支えられているような男だった。ある時下田のキャバレー黒船へ行く五人の仲間に加わってこの二人も旅へ出たが、そこでリルと呼ばれる可憐な惠子という乙女を発見した。一行が引き揚げて帰京する時、歌手志願の惠子が追ってきて東京へ同行することを頼まれた。惠子は東京で哲夫の叔母の煙草屋の二階へ落ち着いたが、眞田は惠子の当座の生活費の面倒を見てやるために女剣戟大江みどりの一座の楽士となって旅へ出た。その留守に惠子は哲夫の友人の厚意でラジオ歌手としてデビューすることができた。ラジオからもれる惠子の声を聞いた眞田は、みどりの求愛を退けて東京へ帰ってきた。東京へ帰った眞田に、哲夫は惠子との愛情を打ち明けた。しかし眞田こそ一目見た時から惠子を愛し彼女によって生き甲斐を再び感じ出していたので、その痛手は大きかった。哲夫はそれを知ると眞田のために惠子から遠ざかり、酒びたりの毎日を送るようになった。惠子の哲夫への深い愛を知って哲夫を探し出し、恩愛の鉄拳をもって彼の仕事への精進を激励したのは眞田だった。そして二人を結んでやった。
眞田文吉
島木哲夫
大原惠子
大江みどり
山下
徳兵衞
北見
瀬川
大森
キャバレーのマスター
[c]キネマ旬報社