見明凡太朗
辰造
中篇(四巻)である。天然色映画の研究に従っていた西村元男の監督第一回作品。コロムビアの久保幸江を主演に「トコ春じゃもの」の船越英二、伏見和子、「愛情について」の見明凡太朗、他にシミキンがひさびさの映画出演をする。
地方の町の小劇場大黒座で興行中の若草レビュー劇団は不入りのため、女座長小夜子はストリップをやろうと申出るが、古風で頑固な人情家の座主辰造は承知しない。然し彼は借金に苦しんでいるので、演出家の信吉は新しい劇場を探して歩くが成功しない。そこへ辰造の娘で歌手を志して家出したお春が、紅春子という有名な流行歌手になって帰って来たが辰造は怒って家に入れない。若草団の困窮を知ったお春は、別の劇場に出演中だったが、特に大黒座に出演して一座を助けようとし、相手役の水田もここに出ようと言い出した。そして歌う女剣劇が華々しく開かれたが、お春が現われないので満員の観客は大騒ぎになった。そこへ花道から扮装した紅春子が登場し、この興行は大当りとなり、辰造の心もとけて目出たく幕切れとなった。
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