四代目澤村國太郎
鍛冶常老人
長谷川伸の小説『江戸の花和尚』によって、「流賊黒馬隊 暁の急襲」の比佐芳武が脚色し、新人河野寿一が第一回の監督にあたっている。撮影、音楽はそれぞれ「母子鳩」の松井鴻、高橋半。花菱アチャコ、横山エンタツの顔合せの他、「大菩薩峠 甲源一刀流(1953)」の澤村國太郎、「女間者秘聞 赤穂浪士」の阿井三千子、「魚河岸の石松」の河津清三郎等が出演する。
上方者の鍛冶職人熊五郎は相模屋の若旦那与之助と路上で大げんか、怪力をふるって相手を不具にしてしまい、親方に破門される。親方の娘、許婚のお花は泣きしずむが、しかたもない。善事を十回重ねなければ帰れないとあって、熊五郎は門付坊主に扮して江戸中を彷う。--半年後。彼は飛込自殺を一度救ったばかりだが、折しも豪商紙屋から十両を盗んだ赤猫三次をひっとらえ、改心させてともども金を返しに訪れると、一人娘、与之助の許婚お長が七人の侍に誘拐された直後である。熊は罪亡しはこの時と捜査役を買って出るが、二日たち三日たってさっぱり手がかりかつかない。一方、三次は小料理屋の女おきんへの執心から熊の名をかたって再び十両を紙屋から引出す。が、さすがに後めたいところにおきんの説教もあり、蔭ながら能の手伝いをはじめる。蛇の道は蛇、たちまち犯人の巣松垣貫入道場をつきとめた。熊に連絡し、目つぶしの胡椒用意のうえ道場へのりこんで、大立廻りの末お長を救いだしたものの、追跡してきた松垣一味に愛宕神社境内へ追いつめられる。ところへおきんの急報で駆けつけたのは三次の飲み友達浪人宮部。彼の助太刀で松垣らは斬られ、あるいは退散したが、深手を負った三次はおきんの腕の中でついに落命する。お長と与之助の婚儀は無事にすみ、熊五郎の破門もとけた。
鍛冶常老人
娘お花
熊五郎
相模屋与之助
宮部長七郎
おきん
お松
松垣貫入
赤猫三次
紙屋治右衛門
娘お長
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