佐々木明子
マチ子
トービジョン第二作。物理的なデフォルマシオンに替って心理的なデフォルマシオンをねらったものだそうである。脚本・監督田尻繁の他スタッフは前作と同じ。主演の佐々木明子は日劇ミュージック・ホールの踊り子だが、北川町子、田代百合子、島秋子など東宝の若手陣をのそげば、ミュージック・ホールのメンバーが総出輝の形である。
マチ子は日劇ミュージック・ホールの数ある踊り子のうちから一躍ソロ・ダンサアに抜擢され、今日が初日という朝、階段でハイヒールの踵がとれる。加えて送り届けられたお祝いの花束の中に「マチ子、お前は殺される、近い中に」なる脅迫状を見出し、マチ子は不安でどきどきする。いよいよ開幕。--サンバにのって舞台に出たマチ子は、強いライトに目がくらみ、セリ出しの穴に落ちる。黒眼鏡の男が現われ、白刃をふるってとびかかる。夢中でにげるマチ子。どこまでも追ってくる白刃。マチ子は驀進してくる電車へ。--しかしそれは幻想だった。黒眼鏡の主は彼女の後援者、ユーモア作家の石丸であり、花輪は、彼女の抜擢をねたむ同輩ミツエのいやがらせである。いまは後悔したミツエとともに、マチ子は晴ればれと舞台に踊りでた。
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