堀雄二
相生又四郎
捕物作家クラブの土師清二、佐々木杜太郎、谷屋充、城昌幸、陳出達朗、野村胡堂が執筆した『島から来た魔像』を原作に、「真田十勇士」の結束信二と「南国太平記」の高岩肇が脚色、「真田十勇士」の河野寿一が監督に当った。撮影は「真田十勇士」の吉田貞次、音楽担当はやはり「真田十勇士」の高橋半。出演者は「南国太平記」の堀雄二、「朝霧(1953)」の徳大寺伸、「真田十勇士」の原健策、喜多川千鶴、「南国太平記」の宇治みさ子など。なお、この映画は第一部狂風妖雲篇、第二部刃影密書篇、第三部魔像乱舞篇の三部に分けて製作される。
第一部--二四〇年の昔八丈島の遥か南方に無人島があった。密出国を企てた蘭学生相生又四郎、大月、長岡の三名は漂浪の末、この島に上陸し、唯一の住人である老人からこの島に眠る黄金の秘密を打ちあけられ、海図と共に長崎の廻船問屋字喜田屋を頼れとの指図を受けて島を離れた。その頃長崎奉行から勘定奉行に転じて江戸に帰った田口加賀守は、金座改役後藤と共謀し、黄金島の秘密を探ろうと、東上した字喜多屋が密貿易をしている事を口実に脅迫して協力させる。長崎に到着した又四郎は師高島秋帆とその養女五十鈴の引きとめるのも振切り、蘭学布教資金を得るため、字喜多屋の後を追って江戸へ向った。然し幕府の蘭学者圧迫は厳しく、而も頼りとする秩父屋は断絶していた。字喜多屋は海門を頭とする赤潮組に三人の命を狙わせる。五十鈴は相生を慕い、父に無断で江戸へ上ったが、赤潮組が彼女を取囲んだ時不意に現われた旅芸人お才が、手裏剣を投げて五十鈴を助ける。 第二部--五十鈴は又四郎の幼馴染のお才の一座と同行して江戸へ向った。その頃長崎を放浪していた謎の狂人は誤って崖から落ちて秋帆に救われたがその衝撃で長年の記憶喪失から正気に帰った。彼こそかつて字喜多屋の蘭討を受けて狂人となった宇喜多屋の真の主人三郎兵衛であり五十鈴はその実子だった。秋帆から一切を聞いた彼も直ちに江戸へ向う。江戸では蘭学者圧迫は益々厳しく、長岡はついに仲間を裏切って隠れ家を密告する。又四郎と大月は長岡を斬り、捕手の囲みを破って逃走した。五十鈴はお才の家に同居して相生を探している。又四郎は赤潮組に囲まれたが、その同じ場所で三郎兵衛も仁左衛門に恨みを晴らそうとする。大月は敵の優勢に怖れ、又四郎の苦闘を見すてて逃走した。 第三部--又四郎は三郎兵衛と力を合せて危機を脱し、二人はお才の家で五十鈴と再会した。その時大月の裏切りでその家は赤潮組に囲まれ、又四郎は海門の鎖鎌に応戦しつつ三郎兵衛とお才を逃がし五十鈴と共に危機一髪の所を、旗本松平刑部に救われた。刑部が介入した事を恐れた加賀守は、仁左衛門に黄金島への船出を急がせる。黄金の独占を目論んだ仁左衛門は、大月を毒殺し海門と高飛びを企てた。だが本船に向う伝馬船の船頭こそ又四郎の変装だった。彼は海門を斬り、仁左衛門を捕えて島の地図を取り帰した。やがて刑部の指揮する大船は又四郎、五十鈴を乗せて黄金島へ向ったが、一夜その島は大音響と共に爆発、沈没してしまった。時経て加賀守、仁左衛門は断罪され、又四郎は浦賀奉行勤務に取立てられ、新妻五十鈴と一緒に江戸を離れた。
相生又四郎
大月毛馬次郎
長岡弾之助
宇喜多屋仁左衛門
田口加賀守
後藤三右衛門
水野越前守
お才
五十鈴
安江
高島秋帆
妻正乃
下男源次郎
松平刑部
片山平十郎
海門陣八郎
秩父屋三郎兵衛
監督
原作
原作
原作
原作
原作
原作
撮影
音楽
美術
照明
録音
企画
脚色
脚色
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