若原雅夫
吉良の仁吉
「次郎長三国志 第八部 海道一の暴れん坊」に次ぐ次郎長三国志、本篇は前後篇に分けて封切りされる。従って第一部「次郎長売出す」(52)以来三年越しの本シリーズもこの後篇第十部をもってここに完結する。村上元三の原作より、前作と同じくマキノ雅弘(やくざ囃子)が監督しているが、今回は脚本を「七人の侍」の橋本忍、撮影を「さらばラバウル」の山田一夫がそれぞれ担当。出演者は前作とほぼ同じであるが、今回は「かくて夢あり」の若原雅夫、「黒い罌粟」の角梨枝子、「やくざ囃子」の岡田茉莉子等が新しく登場する。
伊勢国鈴鹿郡荒神山--それは神戸の長吉が親の代から譲られた繩張だったが、今年の祭礼には神戸の安濃徳が賭場を開くという。争いを嫌う長吉は吉良の仁吉に相談を持掛けた。その頃仁吉の家の二階には石松の仇、都田三兄弟を狙う清水一家の面々が草鞋を脱いでいた。仁吉の女房お米は仁吉に繩張りを譲った吉良の馬之助の娘だが、ヤクザ稼業を好いていなかった。お米に言われるまでもなく、仁吉は話を丸く治めようと清水の一同と神戸に向った。途中出会った女こそ、仁吉の昔の許婚お菊で、仁吉がヤクザになった為離れていった女だった。安濃徳との交渉は館林の玉吉と守屋の忠造両親分が仲に入って成立するかに見えたが、祭礼の翌日になって清水一家の宿敵黒駒が安濃徳の蔭に廻って交渉は決裂した。自分の努力が水泡に帰した仁吉は、この一戦を最後にヤクザから足を洗う旨のお米への伝言をお菊に頼み、荒神山へ登った。清水一家と仁吉は敵の大勢を斬りまくり、仁吉は安濃徳の用心捧角井門之助を討ち取ったが、自らも銃弾に倒れた。吉良の高遠寺での仁吉の法要の席上次郎長はじめ大勢の親分貸元を前にして、お米は仏になって始めてヤクザの足を洗う事が出来た仁吉の位牌によよと泣きくずれだ。しかし、清水一家は再び仁吉の復讐に伊勢湾を渡って行った。
吉良の仁吉
神戸の長吉
清水の次郎長
大政
小政
桶屋の鬼吉
関東綱五郎
法印大五郎
大野の鶴吉
追分三五郎
お米
お菊
お鶴
張子の虎三
館林の玉吉
守屋の忠造
黒駒の勝蔵
都田村の吉兵衛
都田村の常吉
都田村の梅太郎
安濃徳
角井門之助
吉良の馬之助
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