海江田譲二
仙石忠興
松竹が純娯楽映画として企画した第一回作で、「めぐり逢い(1953)」の池田浩郎が監督する。脚本は「股旅しぐれ」の中山隆三が池田監督と共同で執筆し、「伝七捕物帖 刺青女難」の片岡清が撮影する。主なる出演者は「美男天狗党」の若杉英二、「螢草」の由美あづさ、北龍二の他、海江田譲二、戸上城太郎、市川段四郎、藤代鮎子、新人中山淳二である。
元和年間、近畿の雄藩十五万石三日月城主仙石忠興は病身のため世子秀丸に世継させようとしていた。だが秀丸は鷹狩の帰途に、若狭の白狐と呼ぶ野武士に誘拐され、お守り役稲葉兵部は責を負って自殺した。これは家老保科弾正が側室お妙の方と通じ、彼女の子竹丸に家を継がせるため野武士と共謀したのだった。兵部の娘桔梗は白狐を討つため男装して山へ向う。同じ頃切支丹宗徒丹羽道雪が、刑場から白狐のため奪取された。実はこの白狐が真の若狭の白狐一族で、切支丹を信じ弱者の味方をする野武士だった。頭目の鶴千代は野武士鞍馬の六郎太や伊奈の太郎らが白狐を名のって悪事を働き、秀丸を幽閉したことを知る。六郎太はこの土牢には娘朱実以外は近よせない。片目の太郎は朱実に恋慕し、兄と違って心の優しいかほるは、飛助を恋した。男装の桔梗は太郎と争うが、太郎から白狐は俺の敵だと聞かされ、六郎太の一団に加わる。鶴千代は秀丸が自分と瓜二つと開かされて驚くが、父道雪から真実を告白された。二人は忠興と亡き側室との間に生れた双生児で、お家騒動を恐れた忠興は、当時仙石家の重臣だった道雪に鶴千代を預けたのである。白狐の山塞を狙った太郎等の襲撃は失敗し、桔梗は捕えられ、偽白狐の太郎こそ父の仇である事を知る。秀丸を救うため鶴千代は桔梗の手びきで忍びこんだが、この計画は失敗し、桔梗は捕えられ鶴千代は陥し穴に落ちこんだ。 続鉄仮面・白狐一族--鶴千代は配下の市兵衛、魚彦、広沢らに救われ、桔梗も飛助とかほるに助けられた。六郎太等は秀丸を拉して海上の浮島に拠を構えた。保科弾正は忠興に竹丸の世継ぎを迫ったが、忠臣内藤修理の反対で奸許は成らなかった。鶴千代は魚彦の報告で六郎太が海上にあるのを知る。その浮島では仙石家への仕官をもくろむ六郎太と、白狐を倒し、朱実を手に入れて山野を己れのものとしたい太郎とが対立し、太郎は遂に六郎太を斬りすて、誤って妹かほるも殺してしまう。朱実と飛助は断崖から海中に身を投じた。その後、海岸で浮島の様子を探る鶴千代は桔梗が働いている居酒屋で役人に追われ、旅芸人の小舎に逃げこんだ。そして計らずも吹矢の女芸人となった朱実に救われた。太郎は単身弾正の邸に乗込み、若殿と引換えに三千両の身代金を島へ届けろと要求する。弾正の使者青木軍太夫の一行が島へ渡るのを知った鶴千代は、その使者になりすまして島へ渡ったが見破られ、太郎の部下、軍太夫一行と激戦が行われた。その隙に太郎の配下三平が、不思議や秀丸を小舟にのせて海上へ逃れ出た。 続々鉄仮面・三日月城の決闘--三郎は舟底に隠れていた朱実と飛助に海中へつき落され、秀丸を奪われた。海岸で鶴千代に助けられた三平は、内藤修理の恩をうけた男だと名乗った。道雪はこの乱闘に傷き、十字架を胸に静かに瞑った。軍太夫等は山に逃れた朱実や太郎を追い、秀丸を拉し去る。朱実は太郎を父の仇と斬りつけるが、逆に深傷をうける。そこへ駆けつけた鶴千代は太郎を斬り倒し、朱実は彼の腕に抱かれて死んだ。弾正は秀丸に鉄の仮面を被せ、桔梗の幽閉されている地下牢に入れ、忠興に強要して世継変更の届けと隠居願の直筆を書かせ、その使者を公儀のもとへ走らせる。だが魚彦はその文書を奪い、市兵衛は地下牢から桔梗を救出して山へ帰った。更に鶴千代は秀丸を救出したが、鉄の仮面をはずす事が出来ない。城中では竹丸君世継決定の時が迫ったがそこへ秀丸になりすました鶴千代が内藤修理と共に現われ、弾正の奸計は破れ、桔梗と鶴千代の刃に仆れ、お妙の方は竹丸と共に自害して果てた。かくして鉄の仮面をはずされた秀丸の世継ぎは決定し鶴千代は桔梗を伴い、配下と共に日本を離れ、呂宋島を目さして船を進めた。
仙石忠興
仙石秀丸
仙石竹丸
側室お妙の方
保科弾正
青木軍太夫
内藤修理
妻綾
毛村三平
稲葉兵部
娘桔梗
丹羽道雪
配下広沢
配下市兵衛
配下魚彦
鞍馬の六郎太
娘朱実
弟飛助
配下伊那の太郎
妹かほる
与平次
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