石井一雄
六条左馬頭
吉川英治の少年冒険小説から「竜虎八天狗 第三篇・完結篇」と同じく八木保太郎、結束信二か共同で脚本を書き、「さいざんす二刀流」の丸根賛太郎が監督に当り、「水戸黄門漫遊記 闘犬崎の逆襲」の杉田正二が撮影する。主なる出演者は「びっくり五十三次」で映画にデビューした吉右衛門一座の伏見扇太郎、「大岡政談」の石井一雄、「さいざんす二刀流」の千原しのぶ、「旗本退屈男 謎の怪人屋敷」の宇治みさ子、「大江戸千両囃子」の西条鮎子など。
第一篇・月下の若武者--天正十六年。京の都で禁門の騎士六条左馬頭と豊臣の馬術師範鬼怒川粛白とが競い馬を催したが、左馬頭の乗馬は決勝点で狂い死にし粛白の勝となった。一年後、左馬頭は弟菊太郎と励まし合い、駿馬薫風で再度の出場を計る。六条兄弟には千八百年の昔から伝えられた月笛日笛の二管の笛があった。粛白の臣当麻等が兄弟に言いがかりをつけた時、鷹取りお雪に救われたが、彼女は裏切者鎌田十兵衛に亡された天童家の腰元で、行方不明の姫春美を探していた。競馬が近づくと、粛白は半斎に薫風に飲ませる毒薬の調合を命ずる。前年にも粛白は六条家の馬番才助を買収して左馬頭の乗馬を殺したのだった。半斎はこれを拒絶して当麻に殺され、鞭師右近の娘で左馬頭を慕うお千賀はこれに気づく。粛白一味は彼女を監禁し右近を殺した。競い馬の日は来た。才助は再び薫風に毒を飲ませる。第二篇・白馬空を飛ぶ--薫風は決勝点間近くで狂い死にし、左馬頭は落馬して重傷を負い、お千賀は当麻に捕われる。幾月か経て春美を訪ねる旅からお雪は空しく京へ帰って来た。傷癒えた左馬頭は名馬を求めて信濃に辿りつく。山中で彼は名馬吹雪に乗った春美に合い、月笛と引きかえに馬を手に入れる。粛白等は早くも左馬頭を狙ったが、お雪は吹雪の鞍の紋を見て、春美を求めて信州へ行く。春美は愛馬を手放した罪で領主上杉家に追われ、左馬頭は帰京の途中、粛白の配下に取り囲まれる。不吉な予感を覚えた菊太郎は、才助の悪事を知ってこれを斬り、兄を助けるために馬を飛ばした。完結篇・千丈ケ原の激闘--粛白の配下に吹雪を奪われた左馬頭は危く菊太郎に救われ、吹雪は正義の士豊臣の武将加藤孫六から再び兄弟に返された。上杉の軍に追われた春美は下僕小平太と辛うじて京へ逃れ、お雪と行き違いになる。小平次は粛白を見て、彼こそ主の仇鎌田十兵衛である事を見抜く。小平次と旧知の加藤孫六は密かに力を借す。春美は仇を討とうと粛白の邸に忍込み、落し穴に落ちたがその土牢にはお千賀が捕われていた。粛白は秘かに京を逃げようとするが、孫六と左馬頭に追いつめられ、競い馬で勝負を決する事になった。菊太郎は帰京したお雪と力を合せて春美とお千賀を救い出した。競い馬の当日、腕に負傷した左馬頭は月笛日笛を添木として縛りつけ出場する。もはや粛白は敵でなく、左馬頭は見事な勝利を得たが、その瞬間、月笛日笛は砕け散った。かくして六条兄弟や春美、お千賀、お雪たちの上に幸せな日が来た。
六条左馬頭
六条菊太郎
豊臣秀吉
鬼怒川粛白
当麻大蔵
岩瀬文吾郎
村上青人
口取り才助
鷹取りお雪
鞭師右近
お千賀
半斎
天童義明
春美
春美の少女時代
小平次
加藤孫六
六条家番士
奥方
宿の主人
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