森雅之
村上春樹
毎日新聞連載の大佛次郎の小説を「銀座二十四帖」を監督した川島雄三が今村昌平と脚色し、同じく川島自身が監督、「逢いたかったぜ」の高村倉太郎が撮影を担当した。主なる出演者は、「婦系図 湯島の白梅」の森雅之、「第8監房」の三橋達也、「ただひとりの人」の新珠三千代、「裏町のお転婆娘」の芦川いづみ、「朝やけ血戦場」の北原三枝、「俺は犯人じゃない」の左幸子など。
かつて天才画家と謳われた村上春樹は実業界に転じ、今では写真工業会社の社長として確固たる地盤を築いていた。妻房子との間に一男一女があり、圭吉は父の会社の部長をつとめ、珠子は幼い頃に病んだ小児マヒのため身も心も弱く、部屋に閉じこもって絵画に親しむ日が多かった。恩師山口純峰画伯の告別式で春樹夫婦は純峰の息子都築正隆に再会した。彼は上海、シンガポール、パリを放浪していた男で、現在はナイトクラブのマネージャーである。圭吉の愛人山名久美子は、戦争で良人を失ってから酒場で働くうち、圭吉の世話を受けるようになった純情一途の女性である。正隆は自分と関係のあったシャンソン歌手三木原ミキ子を、お坊ちゃん育ちの圭吉に接近させた。ミキ子はおもしのつけてない風船のような女で、圭吉は忽ち心を惹かれた。一方、商用で京都へ出かけた春樹は、戦時中、自分が下宿していた阿蘇家の娘るい子に会った。両親をなくした彼女は、弟の学資を得るため夜はバー、昼はヌード・スタジオで働いている健気さにうたれ春樹は同家の二階を借りることにした。圭吉の心がミキ子に傾いたと知って、久美子は悲しみの余り自殺した。京都から帰った春樹は圭吉の不行跡と誠意のなさに、激しい怒りを覚えずにはいられなかった。久美子の死によって、心に大きな打撃をうけたのは正隆だった。彼の人生の途上に、踏んでも蹴ってもなお縋りついてくる女があるとしたら、パリの女を、上海の女を求める必要はなかった筈である。圭吉も久美子を不愍に思い、父の会社を出て、ひとりで生きる決心をした。そして春樹は周囲の反対を押し切って京都を定住の地に選んだ。古都に長く伝わる舞扇作りに老後の生きかたを見出したのである。珠子が父を慕って京都へ着いたのは、夏祭の宵のことであった。
村上春樹
村上房子
村上圭吉
村上珠子
都築正隆
三木原ミキ子
山名久美子
阿蘇るい子
阿蘇達次郎
西村正太
正太の妻
下宿屋のおばさん
写真機店主山口
ミノオルのマダム
女給A
村上家女中
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