萬屋錦之介
風早蔵人
大林清原作によるラジオ東京連続放送劇の映画化。「剣法奥儀 秘剣 鷹の羽」の結束信二が脚色し「白扇 みだれ黒髪」の河野寿一が監督した。“ヒマラヤの魔王”と呼ばれる宝玉をめぐる冒険時代活劇。撮影は「白扇 みだれ黒髪」の坪井誠。主な出演者は、「続源義経」の中村錦之助、「剣法奥儀 秘剣 鷹の羽」の東千代之介、「無敵の空手! チョップ先生」の田代百合子、浦里はるみ、「真昼の暗黒」の加藤嘉など。
第一篇--戦国時代。備中の国に蔵人の率いる風早一族と左馬之助の率いる南雲一族があった。風早一族が武運に恵れないのに反して南雲一族の勢いは隆盛を極めていた。風早一族の娘小萩は蔵人を慕っていた。左馬之助には忠臣の多聞があった。その頃、海賊竜神丸は天竺の盗賊パサンと共に、四百年前日本に渡り伝えられたヒマラヤ王の印しである二つの勾玉を探していた。ヒマラヤの魔王と呼ばれるその匂玉の一つは野武士上りで尼子家鷹巣城の家老大麻剛左衛門の手にあった。大麻はパサンに協力を約し、配下の黒鷲党に命じてもう一つの勾玉があると思われる風早の里を襲わしめた。旅芸人の桔梗は大麻を父の仇と狙っていた。また左馬之助を尋ねる乳母秋乃とその娘千鳥は竜神丸一味の計画を知ったために囚われの身となってしまった。勾玉をめぐるこの動きを知らない蔵人はある日戦いに出たが、またもや機運を失し兵を返す途中、勝ち戦に恵まれた左馬之助の軍勢に会った。若い二人の族長は互いに譲らず、剣で争うことになった。その頃、風早の里は黒鷲党の襲撃を受けていた。第二篇・双竜篇--急を知らされた蔵人は風早の里に駆附けた。彼は黒鷲党に斬られた父の庄左衛門から、風早一族は四百年前、日本に来たヒマラヤ王カザンナグルの直系の一族であること、王の印しであるヒマラヤの魔王の由来を聞かされた。黒鷲党に追われた小萩は左馬之助に救われ、海神丸の手から逃れた千鳥は蔵人に救われた。蔵人は祖先の誇りを取り戻し、武名をあげようと若き野武士進藤小太郎と結んだ。左馬之助は数々の武勲を尼子家に讃えられ、鷹巣城主として迎えられることになった。家老の大麻は風早の館になかったヒマラヤの魔王の一つが南雲の館にあるらしいのを察し、黒鷲党に南雲の里を狙わせた。一方、左馬之助着任の祝宴に反乱を起そうと計った。桔梗は祝宴の席で舞を舞いながら大麻に近ずき復讐を果そうとした。蔵人もその頃、配下を連れて城外にいた。完結篇・日月篇--尼子の仇敵毛利の軍勢は鷹巣城を囲み、城内は騒然となり桔梗は機会を逸した。南雲の館を襲撃して勾玉の一つを手に入れようとした大麻は尼子を裏切って毛利に内通した。毛利勢は城攻めにかかった。その先頭には今度こそ一族のために功名を立て、左馬之助と雌雄を決せんとする蔵人が一党をひきいて加わっていた。その頃、南雲の館は黒鷲党に襲撃されていた。急を左馬之助に知らせる使いが蔵人の陣中で捕えられ、蔵人は南雲一族の危急を知った。蔵人は左馬之助に救われている小萩のことや、かつて里鷲党に亡ぼされた自分の館のことを思い、目前の功名を捨てると一党を率いて南雲館の救援に向った。黒鷲党を追い払った蔵人は斬られて瀕死の重傷を負っている多聞の口から、南雲一族もまたカザンナグルの後裔であることを聞かされた。一方、鷹巣城内に大麻一味の反乱が起り左馬之助達は危機に落ち入った。だが、乱戦の中で大麻は桔梗に討たれ、勾玉を握ったまま死んだ。折しも駆付けた蔵人一党に毛利軍は破られ、今はお互いの身分を知りあった蔵人と左馬之助は手を握りあった。小太郡は海賊船を襲ってパサンを倒した。左馬之助はかねて持っていた勾玉の一つを蔵人に与え、めでたく宝玉“ヒマラヤの魔王”を手に入れた蔵人は先祖の遺志をうけつぎ、左馬之助達に見送られて小萩と共にヒマラヤへ向った。
風早蔵人
父庄左衛門
与津弥藤太
桜谷弥兵衛
小萩
鳥助
進藤小太郎
南雲左馬之助
大乗寺多聞
大和の彦次
千鳥
秋乃
桔梗
朱実
源太
大麻剛左衛門
海賊竜神丸
麻耶
疾風の勘助
いたちの銅松
熊六
濁川十郎左
山室玄内
森田新六
パサン
尼子晴久
上司康信
村松平太夫
大賀新左衛門
坂垣兵庫
猪越康兵衛
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