解説
昨年派遣された東京大学イラク・イラン遺跡調査団に随行した中村誠二キャメラマン(「カラコルム・ヒンズークシ学術探検記録 カラコルム」)と桑野茂の両氏がメソポタミアを中心に撮影した日本初の大型記録映画。エジプトのピラミッドに始り、イラクの首都バグダード、北メソポタミアのテル・サラサート、ペルセポリス宮殿遺跡などを収録した。音楽は「智恵子抄(1957)」の団伊玖磨、解説は小沢栄太郎。色彩はイーストマンカラー。
ストーリー
ピラミッドそそり立つエジプト。ここはスエズをめぐるエジプト戦争の名残りもいたいたしい。アラビアン・ナイトで有名なバグダードは近代的装いをこらしたイラクの首都。だが一歩裏街へ入ると、近東風俗の氾濫。バグダードからティグリス河を遡り、北メソポタミア原野の西方に小丘テル・サラサートがある。一九五六年十月、東大イラク、イラン調査団が十年計画で発掘を開始、三笠宮を迎えて鍬入式を行い、六~七〇〇〇年前の原始農耕文化の遺跡調査第一歩が踏み出された。メソポタミアは古代丈明発祥の地だ。この古い歴史の中から新しい建設の響きがきこえて来る。それは、砂漠を潅漑するドカンダム工事、世界の全埋蔵量の2/3を産する大油田の輸送工事などだ。西欧帝国主義の重圧から立ち上った新興アラブ民族の力強い姿がここに見られる。だが、果てしない砂漠地帯には、悠久の太古から緑を求めてさまよう遊牧民の群もみられる。かれらの祖先の地メソポタミアは、ここにはじめて足跡を印したシュメール人の往古から、アッシリア、バビロン、ペルシャ、そしてマケドニアのアレグザンダーと、興亡数千年の歴史の跡が巨大な遺跡を形づくっている。ダリウス一世の壮大な宮殿遺跡のあるペルセポリス、いまは住む人もないハビロン、ウルの遺跡これらの柱や壁に彫まれた浮彫は、古代東方文明の盛衰を如実に物語っている。この地に太古の村落を再現しようとする調査団の一行は、きょうも綿密な発掘作業に余念ない。--こうして、解放されたアラブ諸国は歴史の中から力強い歌声をひびかせて近代国家の建設へと進んで行くのである。
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