佐田啓二
旗良平
井伏鱒二の同名小説の映画化で、西日本のローカル・カラーを取入れて庶民生活の哀歓を描いたコメディ。「抱かれた花嫁」の共同脚本執筆者の一人、椎名利夫が脚色、「土砂降り」の中村登が監督した。撮影は「抱かれた花嫁」の生方敏夫。主演は「ただいま零匹」の佐田啓二、岡田茉莉子二人を中心に小林トシ子、花菱アチャコ、伊藤雄之助、トニー谷、市村俊幸、関千恵子、十朱久雄など。色彩はイーストマン松竹カラー。
日曜日、望岳荘アパートでは止宿人達が寄りつどって相談の最中だった。それというのも、主人仙造がかみさんに逃げられてやけ酒をあおりブッ倒れ、その侭あの世へ行ってしまったからである。抵当に入ったアパートと、残された子供の勇太をどうしようか。結局、部屋代をためて逃げた連中から金を集めて廻ることになりその役目は旗に決った。行先は中国、四国。小松千代も一緒に行くことになった。その方面には慰藉料をとる相手が多勢いるから、かき集めて勇太に一部を寄附するというのだ。勇太を連れた二人は岩国、山口から萩へと廻った。萩で千代は婦人科医の箕屋と見合いをする破目になった。箕屋は千代の美貌に大乗気となり後をつけてくる始末。その箕屋を漸くまいた一行は、勇太の母と駈落ちした学生克三の家がある瀬戸田へ着いた。彼は胸の病いで寝ており、勇太の母の浜子も勇太に会おうとしなかった。二人は兄の築水に勇太を引きとって育てると誓わせた。これで旅行の目的は果したのだが、徳島に千代の処女を奪った憎い男がいるというので、助太刀がてら旗も同行することになった。町はちょうど阿波踊で大賑わい。旗は目指す順十郎の家に乗り込んで凄んだが、かえって恐喝の疑いで留置場へぶち込まれた。千代と順十郎の計いでやっと出られた彼が、宿へ帰ってみると「私の集金旅行はここで打切ります。順十郎さんは男の未亡人です。私もここらで身を固めます」という千代の置手紙があった。翌朝東京へ帰る旗を千代と順十郎が夫婦気取りで送るのだった。「ひでえことをしやがる」旗は貰った徳島名物の“やき餅”の包みを鳴門のうず潮の中にたたきこんだ。
旗良平
小松千代
津村順十郎
望岳荘主人山本仙造
妻浜子
子供勇太
香蘭堂
松尾六造
松平公夫
藤沢庫吉
妻歌子
長女
箕屋官次
キャバレーの女愛ちゃん
阿万築水
弟克三
アパートの住人五番さん
アパートの住人八番さん
たたき売り
洗濯婆さんたき
松江の宿の女中
尾道の宿の女中
徳島の刑事
徳島の警官
岩国の料亭の女将
岩国の宿の番頭
岩国の宿の女中
萩の老人
萩の中年男
萩のホテルの女中
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