森雅之
佐山貞次(弁護士)
朝日新聞に連載された川端康成の原作を「夜の鴎」の田中澄江、「続青い山脈」の井手俊郎、「幕末太陽伝」の川島雄三の三人が共同脚色、川島雄三が東京映画と新たに契約、監督した文芸篇。撮影は「一本刀土俵入(1957)」の飯村正が担当した。主演は「続々大番 (怒涛篇)」の原節子、「挽歌(1957)」の久我美子、森雅之、「地上」の香川京子、「その夜のひめごと」の三橋達也「近くて遠きは」の石浜朗。ほかに、太刀川洋一、中北千枝子、丹阿弥谷津子、荒木道子などが助演している。
佐山家の主人・貞次は弁護士、夫人・市子は教養深い優雅な女性。結婚して十年、まだ子供がないが、佐山が担当する受刑者の娘妙子を引取って面倒をみている。ある日、市子の女学校時代の親友音子の娘さかえが、大阪から市子を頼って家出して来た。さかえは自由奔放で行動的。妙子は内向的な影のある娘で、父に面会に行くほかは、アルバイト学生有田とのひそかな恋に歓びを感じている。二人とも佐山夫妻に憧れているが、さかえは積極的、妙子は消極的だ。市子には結婚前、清野という恋人があったが、ある時、佐山の親友の息子光一から何年ぶりかの清野に紹介された。親しげに語り合う二人の様子を、さかえはじっと見詰めていた。その後、佐山が過労で倒れた時、さかえは彼のためにつくし、急激に佐山を慕うようになった。全快した佐山とともに、さかえは彼の事務所に勤めることになり、市子の心は微妙にさやぐのだった。その頃、音子が上京して来、清野のことも話題になったが、その彼女らの前に、佐山とさかえが清野の招きをうけ彼に送られて帰宅するという一幕があった。一方、妙子は有田と同棲するために佐山家を出たが、妙子の心づくしにも拘らず、有田は彼女から離れ去ってしまった。妙子の父の公判が開かれる前日、我侭をいって佐山に打たれたさかえは「小父さまも、小母さまも好き……二人とも好きな時の自分は嫌い……」と叫んで、その晩帰宅しなかった。市子は、佐山との生活での彼女の苦悩をはじめて夫に打明けたが、市子が思ったほど佐山はさかえに心を奪われてはいなかった。公判の日、妙子の父は佐山の努力で減刑になり、また、さかえは音子のいる宿で泊まったことが判り、市子は安堵した。が、それも束の間、佐山が交通事故で負傷した。幸いにも傷は軽くてすみほどなく退院した。退院祝いの日多勢の見舞客のなかに、素直になったさかえを喜ぶ音子や、少年医療院への就職がきまった妙子もいた。だが何よりも佐山家にとっての喜びは、市子がみごもったことだった。そこへ、京都の父の許へ行くというさかえが、お別れを言いに来た。「違ったところで、違った自分をさがし出したい」と告げると、隣室の音子を呼ぼうとする市子をあとに、さかえは雨の中を逃げるように歩み去った。
佐山貞次(弁護士)
佐山市子(貞次の妻)
三浦さかえ(市子の友人の娘)
寺木妙子(死刑囚の娘)
清野吾郎(市子の昔の恋人)
村松光一(佐山の友人の息子)
有田真(妙子の恋人)
三浦音子(さかえの母)
しま(佐山家女中)
浅川(給仕)
吉井恵美(女流画家)
福原元子(市子の友人)
山井くに子(市子の友人)
波木よし子(市子の友人)
みどり洋装店女主人
縫子
オープニングタイトルの歌手
監督、脚本
脚本
脚本
原作
製作
製作
撮影
音楽
美術
編集
衣裳
照明
録音
助監督
監督補佐
製作主任
唄
スチール
記録
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