長谷川一夫
遊び人清次(実は銭形平次)
「女狐風呂」の小国英雄の脚本を、「命を賭ける男」の加戸敏が監督した、お馴染長谷川一夫の銭形平次もの。撮影は「命を賭ける男」の牧田行正。出演は「口笛を吹く渡り鳥」の長谷川一夫をはじめ、「杏っ子」の香川京子、「駅前旅館」の淡路恵子、その他、黒川弥太郎・阿井美千子・千葉敏郎、それに新人の岸正子。色彩は大映カラー(アグファカラー)。
浅草の歌仙茶屋の女お粂は、代地の新助という遊び人が境内の鼓楼に逆さづけになって死んでいるのを発見した。前日、赤犬の巳之吉を探していた男である。同心米倉は、新助の親分聖天の嘉兵衛を訪ねたが、何も手がかりはなかった。嘉兵衛の娘・おしんは新助の出入をもう以前に差し止めてあるといった。--その頃、江戸に、米問屋の子どもたちが次々にさらわれる事件が起っていた。その日も米問屋備前屋の子どもがさらわれ、身代金、千両が要求された。--姥ケ池の暗黒街・巳之吉のドヤへ遊び人清次が十年ぶりに訪ねて来た。巳之吉は始めうたぐったが、証拠の品にすっかり打ち解けた。同じシマに育った兄貴分なのだ。清次はおしんとも幼馴染だった。--幼児誘拐事件はなおも続いた。呉服問屋和泉屋善兵衛を除く大店は皆被害をうけた。和泉屋は先年十組問屋をはずされていた。--これらの子供は浮浪児・次郎吉が誘い出し、ビッコの飴屋・善兵衛の手伝いをさせられていた。次郎吉の背後には嘉兵衛がいた。--笹野新三郎が事件探査を依頼に訪ねた時、銭形平次は不在だった。シマでは、清次を三人の女が慕っていた。お粂とおしんと、それに次郎吉の姉・十七、八歳のお千代までが。清次は巳之吉の助けで嘉兵衛のテストを通り、その身内になった。銭形平次が八五郎をつれ日本橋の和泉屋に現れた。主人善兵衛にむかってシマの善兵衛と同一人だろうと云うと帰って行った。彼はシマへ行くと巳之吉に身分を打ち明けた。本ものの清次が牢で死ぬとき、姿の似た平次に身上話をし、巳之吉や子供たちのことを言い残したのだ。平次は次郎吉を救おうとして、善兵衛の手で聖天一家に捕り、逆さづりにされかけた。巳之吉とお千代の助けで平次は逃げたが、巳之吉は嘉兵衛の弾で死んだ。おしんは父に疑問を持ち始め、捕われたおしんを平次のもとへ逃してやった。お粂は呼出し状を受けとり、浅草寺境内へ行くと死の宣告を受けた。声の主は善兵衛だ。が、お粂が頭巾をとると身代りの平次だった。彼は善兵衛の新助殺しから子供さらいまでの罪状を告げた。十組問屋を仲間外れにされたのを恨んでの犯行だった。聖天一家が襲いかかってきた。が、到着した捕方にみんな捕った。善兵衛は平次の投げ銭の目つぶしをくらって、鼓楼から落ちた。--子供たちはシマから解放され、それぞれ親のもとへ帰ることができた。
遊び人清次(実は銭形平次)
おしん
お粂
お千代
お静
赤犬の巳之吉
お仙
薮の内の伊太郎
聖天の嘉兵衛
善兵衛
八五郎
長八
備前屋幸右衛門
三の輪の万七
お神楽の清吉
代地の新助
常吉
笹野新三郎
米倉市十郎
砂利場の吉蔵
易者道庵
次郎吉
幸右衛門の妻・お千賀
おもと
茂助
今戸の竹蔵
紋平
伍市
多十
畦倉の武吉
和泉屋の番頭
備前屋の番頭
春太郎
三太
金吾
お絹
おこと
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