解説
い号一七九潜水艦の引揚作業風景、回想場面としての戦闘場面、慰霊祭を中心に三巻にまとめたもの。構成は中井義、撮影は渡辺禎三、解説は高橋博。
ストーリー
昭和三十年春、瀬戸内海で「い号一七九潜水艦」の引揚作業が始められた。このい号潜水艦は昭和十八年七月に消息を絶ったと伝えられたものである。湯浅艦長以下八十七名の乗組員を乗せて呉を出港し、近海防衛の哨戒仕務についていたとき、伊予灘沖合に潜水したまま永久に浮上しなかったのだ。救助隊が出動したが、附近の海上に重油の漂うのを認めたきりである。敵に襲われたか、浮遊機のゆえか。いまだに謎のままである。--潜水夫は花束を持って進んだ。巨船い号の船体はすでに腐蝕していた。水深八十米の深海が引揚作業を極めて困難にした。それに内海特有の潮流。が、サルベージ界に聞こえた北星船会社の努力は報いられ、巨体を浮上させることに成功した。見るも無残なその姿。排水作業が行われてこの巨大な鉄の柩の中から、白骨は次々と遺族たちの前に運ばれて行った。彼らは今やっと帰還したのだ。が、大海原の底では、いまだ帰還できぬ幾十万の同胞がわれわれを呼び続けているだろう。