東千代之介
鞍馬天狗
おなじみ「鞍馬天狗」もの。「喧嘩笠(1958)」の結束信二が脚本を書き、同じく「喧嘩笠(1958)」のコンビ・マキノ雅弘と三木滋人がそれぞれ監督、撮影を担当した。
維新前夜の京都では、勤王の士と新選組が対立していた。新選組の一味が勤王党の名をかたって、勤王派の御用商人の呉服商増田屋で三千両を奪ったとき、鞍馬天狗が出現した。--天狗の出現をきき、色めきたったのは新選組の連中ばかりではなかった。天狗の片腕・黒姫の吉兵衛や、祇園の芸妓・小染も、一時姿を消した彼を心待ちしていたのである。二人のもとへ、天狗は早速現れ、喜ばせた。小染は新選組の出入する料亭で、勤王派の潜む和泉屋が新選組に放火されることをききだした。天狗は吉兵衛と共に馬を走らせ、同志を救った。--角兵衛獅子姉弟・早苗と杉作が銭袋を落して泣いていた。天狗がそれを助けたが、それがもとで、清水裏の隠家を、角兵街獅子の親方・隼の長次や新選組一行につきとめられた。天狗は拳銃を放ち、むろん危機を脱した。杉作少年は吉兵衛のもとへあずけられた。--新選組の警戒は厳重になり、桂小五郎らの身も危くなってきた。天狗の指令で、鞍馬山の火祭りの夜に、薩摩、長州、土佐の三藩の代表が集ることになった。当夜、吉兵衛も杉作少年を連れて山へ向った。が、この挙が新選粗にもれ、近藤らは山をめざした。小染は天狗の隠れ家へ走った。「鞍馬寺が危い。でも、あなたは行っちゃあいや。みんな死んだって、わたしはあなたさえ生きていればいい。」「お前の気持は一生忘れまい」天狗は小染をつきはなし、馬を飛ばした。鞍馬の聖祭が最高潮に達したとき、新選組が抜刀してなだれこんできた。勤王派が応じた。群衆は逃げまどった。そのとき、天狗が現れた。「聖地を血で汚す新選組を成敗する」。群衆は天狗に加勢した。「新選組に鞍馬の火を奪われるな」。数刻後、新選組は山から追っぱらわれた。--「旅にまた出る。やがて世の中も変る。その時に……天」この結び文が小染に残されていた。小染は上気した。
鞍馬天狗
黒姫の吉兵衛
杉作
早苗
良吉
数右衛門
浩右衛門
おりん
おみよ
弥平
安吉
桂小五郎
天草則武
大内八郎
内藤一馬
荒尾熊之助
雛丸
お柳
近藤勇
土方歳三
沖田総司
鷲田左門
岩淵郷太夫
小染
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