長谷川一夫
御崎庄五郎
大正十二年、伊藤大輔が書いたシナリオにより故野村芳亭が監督した同名作品の再映画化。再映画化に当っては原作者の伊藤大輔が八尋不二(近作「弁天小僧」)と全面的な改訂を加え、自ら「弁天小僧」につづいて監督した。撮影も同じく「弁天小僧」の宮川一夫が担当した。
江戸時代の初め、琉球・朝鮮近海を横行する海賊船の中に御崎庄五郎とよぶ悪魔的残忍を持つ男を頭目とする末吉船があった。庄五郎は襲撃した船の男は総て殺し、女は乾分の慰みものとして与えることを掟としていたが、彼自身は女に手も触れなかった。船には、幼い頃から船内で育てられた小金という男装の娘がいたが彼女は人知れず庄五郎を慕う年頃となっていた。庄五郎の船が掠奪品の売捌きに長崎へ寄港した。乾分たちの妓楼でのバカ騒ぎ。それを耳にする庄五郎に若い日の苦い思い出がよみがえった。--大阪蔵屋敷の勘定方だった庄五郎は、全盛の太夫・綾衣の色香に迷い忽ち金に窮した。上役の川島は独断で蔵屋敷の剰余金を融通してくれたが、それは川島の奸計で、彼と上役の大脇との公金費消を庄五郎になすりつけるためだった。庄五郎は捕えられたが脱獄し、川島と大脇を斬り、大脇の妾となった綾衣をも斬って逃れた。--庄五郎の回想は小金の突然の訪れで断たれた。捌いた品物から足がつき役人に追われていると言う。庄五郎は直ちに本船へ引揚げたが、船には長脇の豪商の娘・お糸と手代の幸七という駆落者が海賊船とも知らず潜んでいた。船の掟で殺されると知った幸七はお糸を代償に自分だけが助かろうとしたが、お糸に愛想をつかされたばかりか海賊たちの刃にかかって果てた。このとき庄五郎は一同に言い放った。「この女に限って、わしの一夜妻にするぞ」--常にない頭目の言葉に一同は驚いた。お糸は綾衣に余りにも似ていたのだ。間もなくお糸は庄五郎の部屋へ現れた。がその胸には今や男すべてへの憎悪がみなぎっていた。それは女すべてへの憎悪に憑かれた庄五郎に通じた。思わず庄五郎は、お糸を配下の中へ突き出した。が、乾分たちに船艙へかつぎこまれるお糸に、庄五郎は初めて自責の念に駆られた。「あの女を汚させて自分の復讐心が満たされるのか?」--彼は、お糸を取り戻し、配下に近くの島へ届けることを命じた。お糸にも庄五郎の心が通じ、二人の男女の心は相触れようとした。が、このとき、船手奉行の追手の船団が追ってきた。勝目のない戦、庄五郎は、お糸を巻添えにさせまいと、小金と一緒に艀に乗せ船から離れさせた。追手の砲撃が激しくなった。そのとき、末吉船の上に螢火のような妖しい光が現われた。それは百年に一度の奇蹟といわれるセント・エルモの火だった。風向きが急に変り霧が追手の船を包んだ。聖火に守られて末吉船は南の彼方へと去った。
御崎庄五郎
綾衣
幸七
環
小金
錦
お百
種子島の常
お女郎竹
ゴロ丑
大ノ字の安
豆太夫
川島源次郎
太夫一
太夫二
太夫三
都
伊留満兵衛
転法利平
法印大八
中山太一郎
御相撲松
題目の伊三
大脇治右衛門
左り桝の市
印伝の彦
大明神の安
縄手の助
海賊
海賊
海賊
監督、原作、脚色
製作
撮影
音楽
美術
編集
照明
録音
企画
企画
脚色
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