里見浩太朗
鶯の長次
「いろは若衆 ふり袖ざくら」の共同執筆者・大和久守正の脚本を、新人第一回の秋元隆夫が監督した歌謡捕物篇。撮影は「唄しぐれ千両旅」の杉田正二。
大川端に水死体が上った。首には絞殺の跡があった。酒屋「ひさご」の軒下に朱に染った男が倒れた。パラリと小判が落ちた。鶯の長次は「ニセ小判だ」とつぶやいた。死人が身につけていた金槌は、錺職人の使う金槌だった。殺されたのは巳之吉という錺職人で、伝蔵という男にいいもうけ口があるから連れ出されたということだ。十人の錺職人が行方不明になっていることも調べ上げた。が、伝蔵も死体となって発見された。悲鳴を聞いて駈けつけた長次が、押えた一味の一人は事の露顕をおそれた仲間の手裏剣に倒れた。殺された黒覆面は、材木商信濃屋の番頭・新助だった。信濃屋を訪れた長次は事件の鍵をつかんだ。それは、かつて長次が酔漢に襲われているのを助けてやった町娘が信濃屋の一人娘で、その礼にと差出された小判がニセ小判であり、数日前蔵前の札差し佐渡屋から届けられたものだと判明したのだ。--佐渡屋の主人銀兵衛は夜ともなると風のように家を空ける。番頭の清吉は、小唄の師匠文栄に熱を上げ身分不相応な貢物をしている。ある夜、雷雨にたたかれながらも長次は、佐渡屋の裏庭で看視を続けていた。と、一条の電光とともに銀兵衛の居間が火をふき、銀兵衛は黒こげ死体となっていたが長次は表情一つ変えずつぶやいた。雷だったら天井は下向きに破れているはずだ……と。文栄のもとに“竹屋町竜国寺へ来い”と清吉からの投げ文が飛びこんだ。張りこんでいた長次がこれを見逃すはずはない。頭巾で顔をかくし文栄の身替りとなった長次は、竜国寺をたずねた。大がかりな贋金の鋳造場へと通された長次は、幽霊のマスクを手に、不気味な笑いを浮かべている銀兵衛の姿を見た。「やい化け物、雷にかえてしかけた花火がかえって仇となったな」長次は啖呵を切った。長次の活躍に、一味は縛についた。
鶯の長次
鶴亀の芳造
三次
お雪
清吉
お糸
文栄
佐渡屋銀兵衛
そば屋熊七
新助
信濃屋四郎五郎
お里
お粂
梅松
俊太
源太
権造
嘉兵衛
丑松
伝蔵
太助
仁助
おとき
巳之吉