金子信雄
牧戸一郎
檀一雄の『女の山彦』を「群集の中の太陽」の共同脚本を書いた池田一朗が脚色し、「実いまだ青し」の牛原陽一が監督する裕次郎の山岳メロドラマ。撮影は「祈るひと」の横山実。
日本アルプスで、牧戸次郎が遭難した。雪崩のためである。彼は山岳写真家で、兄の一郎は流行作家だった。一郎は信州の有馬寿々子の家を訪ねていた。三日のち、次郎は救い出された。寿々子が次郎を看病した。彼の兄から結婚の申込みを受けたことを次郎に相談した。彼のやさしさがそうさせたのだ。次郎は兄との結婚をすすめた。寿々子はその気になった。一郎は青木湖のほとりに別荘を建てた。次郎は退院し、別荘に留守番として寝泊りした。が、村人たちは彼に食糧を分けてくれないのだ。山男の信吾の意趣返しを恐れてである。信吾は祖父の代に士地をまき上げられて以来、町の人を憎んでいるのだ。安雄という青年だけが食糧を運んでくれた。次郎は別荘のそばに掘立小屋を立て「湖」の連作を撮り始めた。信吾が安雄の家へどなりこんできた。次郎は彼と争った。闘いつかれて、二人は握手した。一郎夫妻は式を終え、別荘で暮した。--昔の一郎の女・登見子が遊びにきた。酔った女は一郎とふざけそしていった。“次郎さん、先生の奥さん好きなんだな”。この言葉が次郎の耳から離れなかった。翌朝、次郎はどこかへ出発した。春になって、一郎はカメラ雑誌で弟の連作の中に寿々子のポートレートを見出した。カメラが汚れると、人間を絶対に撮らない次郎が寿々子を撮った。一郎は弟の気持がわかった。彼は東京へ行ってしまう。半年後、次郎が湖畔へ帰ってき、それを知ると、一郎を追って東京へ向った。お節介をするなと、一郎はいった。次郎は寿々子をさとし、迎えにやらせるが、一郎は北海道へパリ帰りの啓子と発っていた。夫を追って、妻はあちこちを廻ったが、無駄だった。実家へ帰った。夫が帰ってきたとき、寿々子はどうしても彼を許せなかった。彼が去ったあと、気が変り、また追っていく。別荘で、一郎が啓子とたわむれていた。寿々子はそのまま湖へ走った。朝、寿々子は湖畔に倒れていた。信吾が救った。次郎は一郎を外に呼び出し、寿々子のそばを離れないでくれと頼んだ。一郎は自嘲的だった。次郎は兄をなぐった。二人はかつての兄弟のようになぐり合った。そして和解した。--次郎は山小屋をこわし、火をつけた。寿々子を愛している。だからこそ、兄と幸せに暮してもらいたかった。峠で、彼は湖のほとりの別荘を見下し、呼びかけた。朝焼けの山々から山彦が返ってきた。
牧戸一郎
牧戸次郎
有馬寿々子
有馬孫三郎
咲田啓子
登見子
信吾
古田
安雄
山川
村松
安雄の父
大町病院の看護婦
小鳥屋の親爺
スターホテルマネージャー
鈴木
山本
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