志村喬
土岐左衛門尉
かつてPCLで滝沢英輔によって監督された作品の再映画化。山中貞雄の脚本を今回新しく黒澤明が潤色、「銀座のお姐ちゃん」の杉江敏男が監督した。撮影は「まり子自叙伝 花咲く星座」の鈴木斌。
北条氏政が関東管領になった永録・元亀の頃、天城山を根城に野武士の一団が活躍していた。放浪の野武士・甲斐六郎は六十余州第一の浪藉者と自称する男だ。暴れ馬を捕えた手腕を買われ、その一団に加わった。--土岐左街門尉には、太郎・次郎の息があった。太郎は管領家へ献納する軍用金を護送する役を申しつけられた。彼は許婚・小雪姫を残して出立した。帰城と共に祝言を挙げるはずだった。次郎は小雪姫を慕っていた。兄が帰らねば……。家老の山名はそのつぶやきを聞き逃さなかった。--軍用金の行列は天城山中にさしかかった。野武士達が襲ってき、荷馬は突っ走った。六郎がその馬を追った。太郎も追ったが、撃たれ、落馬した。--城に生き残った供侍が帰ってきた。山名はその侍を斬り、左衛門尉には太郎が軍用金を持って逃げたと報告した。次郎も催促にきた管領家の使者に、そう告げた。管領家は太郎を極悪人として布告した。太郎は水車小屋の娘田鶴に助けられ、介抱を受けた。六郎は山塞に帰らず、軍用金を持ったまま消えたのだ。--村の居酒屋で、野武士たちは六郎を見つけた。乱闘。傷のいえた太郎が軍用金を探してやってきた。彼と六郎は意気投合し、野武士たちを追っぱらった。太郎は六郎の隠れ家を根城に軍用金を探すことにした。遂に六郎は軍用金を自分が隠していることを白状に及んだ。二人は軍用金と共に土岐へ向う。途中で、管領家の捕方に囲まれ、太郎はすぐに入牢した。城に連絡して貰えば解決すると思ったからだ。が、そうはいかなかった。--六郎は山塞へおもむき、野武士たちに太郎を救えと檄を飛ばした。野武士たちは太郎を救いだしたが、彼は六郎たちのとめるのも聞かず、城へ向うのだ。父や弟が裏切ったとは思えないし、小雪姫にも会いたかった。城門は開かなかった。小雪姫が彼の声を聞きつけた。山名がさえぎった。銃弾がとんできた。太郎は血まみれになった。その時、六郎たちが駈けつけた。太郎は叫んだ、“権謀術策の上に栄華を築く輩は総てわが敵だ。今日からはこの怒りと苦しみを忘れぬため、鎧兜も槍も太刀も皆、血の色に染めて戦うぞ”六郎たちはそれに和した、“おぬしに続くもの総てそれにならおうぞ”--これ以後、富士の裾野を、真紅の騎兵団が駈けめぐった。御用金は必ず奪われ、悪地主はこらしめられた。“天城の赤鬼”は百姓達から歓迎された。良民女子供を苦しめてはならぬ、--首領の太郎と六郎がつくった掟は厳しく守られていた。が、女に飢えた治部と梵天が水車小屋の娘を襲う事件が起きた。太郎に見つかると、逃げ、役人に密告した。勿ち山塞は囲まれ、焼打ちを受けた。野武士たちは一日後の再会を約して四散した。土岐では、左衛門尉が病床にあった。実権を握った山名と次郎は彼を亡き者にしたかった。次郎は父を遠乗りに誘い、崖下に突き落したのだ。太郎は葬儀に潜入し、小雪姫あてに脇差をとどけさせた。乙女峠で皆に再会した。崖下に父の死体を発見し、やっと陰謀が次郎と山名の仕業と悟った。太郎は野武士たちを連れ、城へ駈け入った。小雪姫はすでに脇差で自害していた。太郎のかたみの品として渡されたのだ。次郎は山名から城乗っ取りに利用されたのを知った。発狂し、放心した。山名は六郎の一刀に倒れた。--太郎は父と小雪姫を手厚く葬った。真紅の騎兵団は新天地へ向った。
土岐左衛門尉
兄太郎虎雄
弟次郎秀国
小雪姫
山名兵衛
甲斐六郎
治部資長
梵天
抗兵衛
近江の藤太
足柄の岩松
鬼念
速磨
景正
清兵衛
伸六郎
瓢右衛門
保名
小鉄
犬彦
駿之介
田鶴
音五郎
管領家の使者畑山
百姓の親爺
太郎の供の侍
門番
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