長門裕之
桂木正夫
「日本」所載の菊村到の小説を映画化したもので、暗黒街におちこんだ男の恐怖とあがきを描いたアクション・ドラマ。「男が爆発する」の共同執筆者・山崎巌が脚色し、「若い豹のむれ」の松尾昭典が監督した。撮影は「その壁を砕け」の姫田真佐久。
神戸、夜。立花組の正夫は、兄貴分の辰吉と連れ立ってキャバレーを出た。突然、銃声が響き辰吉が倒れた。犯人は同じ立花組の幹部立石だった。正夫は仲間にも、警察にも口を割らなかったが、奈美子にだけは洩らした。奈美子と知り合ったのは一年前だった。正夫は博多の人形問屋のあととりだったが、女給で年上の奈美子が好きになり、親の反対にあって、神戸に駈落ちしたのである。翌日、正夫はボスの立花に呼び出され、口止料を握らされた。単なる立石と辰吉の勢力争いではなかったのだ。犯人として、チンピラの五郎が立花につきそわれて自首した。が、日東新聞神戸支局の記者木元だけは疑いをもち、正夫の行動を監視し始めた。辰吉の葬儀の日、正夫は辰吉の妹文枝の接待役を命じられた。彼は文枝を連れて神戸を案内した。惹かれるものを感じた。正夫は急に自分が腹立しくなり、文枝に真相を打明け、さらにその足で日東新聞へ行き、木元にも告白した。警察は立石を逮捕した。辰吉殺しは、密輸洋酒販売の仲間割れだった。立花はすでに身をかくし、殺し屋の由良を呼びよせていた。正夫は木元の計らいで東京へ行った。附近に文枝一家が住んでいた。しかし、いつも黒い影がつきまとっていた。奈美子がやって来て、正夫とともに新宿のバーに勤めることになった。ある夜、アパートに由良が待っていた。その夜はそのまま帰っていった。アパートに文枝が尋ねてきたことから、奈美子は正夫を責めた。しかし、文枝には許婚者がいた。奈美子がいなくなった。まつわりついていた黒川を追ったが、その夜由良が現われた。由良は正夫を横浜の暗黒街へ連れていき、拳銃を二挺買いいれた。その時、黒川に連れられた奈美子を見た。黒川は密輸団のボスで、女たちを香港に送っているという。由良と正夫は荒川の夜の河原に対峙した。二挺の拳銃が火を吹き、正夫は弾かれるように倒れた。歩み寄った由良も、ゆっくりと崩れ落ちた。その頃、横浜港を水上署のランチが、一隻の貨物船を追跡していた--。
桂木正夫
江田奈美子
米田文枝
木元明
由良
立石純平
立花豊
米山辰吉
黒川
早川
田代刑事
岡山刑事
五郎
ボタさん
日東新聞給仕
文枝の母シゲ
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