五年振りに故郷の土を踏んだ男、しかしそこには遠く離れた過去の想い出しかなかった。その青年の暗い青春を描く。脚本は鴨田好史、監督は脚本も執筆している「一条さゆり 濡れた欲情」の神代辰巳、撮影は「哀愁のサーキット」の姫田真佐久がそれぞれ担当。
ストーリー
克は五年振りに故郷の土を踏んだ。しかし彼を迎えたのは冬のドス黒く荒れた暗い海だった。克の仕事は寂れた漁港の映画館・昭和館のフィルム運びである。彼にとって住み心地の良い場所であり、女王人・よしえにも気に入られていた。やがてよしえは、克の過去に興味を持ち出し、その興味が二人を深い関係へと押し進めていった。ある日克は、学校時代の同級生・三浦と岡田に会った。過去を忘れたい克は、あくまでも自分は克ではない、と言い張り二人に叩きのめされてしまった。そして数日後、今度は同級生の光夫とも出会った。光夫と彼のガール・フレンドの洋子とのカーセックスを覗き見し、見つかってしまったのだ。それ以後、光夫と洋子は克の人生を捨ててしまったような態度に興味を覚えた。翌日、光夫はいやがる克に誰とでも寝る幸子を紹介した。やむなく克は幸子を抱こうとするが、そんな煮え切らない克を幸子は拒否した。光夫たちの克の過去に対する興味はますます強くなり、今度は克の母親を連れて来て、対面させた。克は母親ではない、と突き放すが、本心を洋子に見抜かれてしまった。洋子は哀れむような眼を克に向けたが、同時にそれは克への熱い眼差しでもあった。その眼が克には安らぎを感じさせ、自分の過去を洋子に告白するのだった。それは東京で起こしてきた殺人のことだった。信じかねる洋子。しかし二人の間には愛が芽生えていた……。克の前に一台の車が止まり、中から出て来た男が突然克の胸にドスを突き刺した。崩れていく克。その眼が一瞬洋子の顔をとらえた時、無念さと、安堵の色があった。
コラム・インタビュー・イベント
ニュース
作品データ
- 製作年
- 1973年
- 製作国
- 日本
- 配給
- 日活
- 初公開日
- 1973年3月24日
- 上映時間
- 76分
- 製作会社
- 日活
[c]キネマ旬報社