川谷拓三
拓三
太平洋戦争中、過酷な戦況を極めたフィリピン戦線の傷跡をドキュメント・タッチに描くドラマ。脚本・監督は「ふ・し・ぎ・なBABY」の根本順善。撮影は「山田ババアに花束を」の杉村博章がそれぞれ担当。
古くなった一枚の写真をウエストバックに入れてマニラの国際空港に降り立った俳優・川谷拓三。二十歳そこそこで恋も知らず、特攻隊員として若き生命を散らしていった若者たちの魂の叫びに触れることを目的にやって来た拓三は、そこで一人の老婆と出会い、一緒に旅をすることになる。戦争で死んだ甥の墓参に来たという老婆は、戦争を知らないという拓三をマニラ湾に浮かぶコレヒドール島ヘ案内する。そこには太平洋戦争の紛れもない事実が残っていて、拓三は息をのむ。要塞の上で老婆は突然「月の砂漠」を唄い出し、その姿に拓三は、自身の青春時代を重ね合わせていくのだった。二人はマニラから北へ90キロほどの距離にあるマバラカットという町へ向かう。マバラカットは、特攻体当たり攻撃が初めて実行された場所であり、老婆の墓参の地でもあった。そこで老婆は次第に明るさを失っていく。老婆の墓参は、甥ではなく、本当は恋人だったのだ。マバラカットには、特攻隊員たちが出撃当日まで生活した家屋が、椅子やテーブルをそのまま残して現存していた。「あのころの若い人の生命は、こんな家具よりも軽かったんですね……」と老婆は呟く。そして、この地で終わるはずだった二人旅は、やがてセブ、レイテ島へと続いていき、セブの村で川でおぼれている一人の子供を助けた拓三は、その祖父から、日本兵の銃弾によって死んでいった子供たちの話を聞かされる。痛みを受けながらもレイテの海辺へ行った拓三は、そこで46年前の戦闘が突き刺さってくる。そして、マニラに戻った拓三と老婆は、フィリピンに帰化した日本人女性に衝撃的な証言を浴びせられ、返す言葉もなく旅を終えるのだった。
監督、脚本
製作
撮影
音楽
編集
照明
録音
助監督
プロデューサー
スチール
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