監督
一九六三年に狭山市でおきた狭山事件の容疑者として逮捕され、その無実を訴える石川一雄氏を中心に、当時の事件関係者の証言を交えて狭山事件の真実に迫るドキュメンタリー。監督は「ドキュメント'89 脱原発元年」の小池征人。撮影は「映画の都」の大津幸四郎と「老人と海」の須藤恵司が共同でそれぞれ担当。(16ミリ)
ストーリー
一九六三年五月、埼玉県狭山市で起きた女子高校生殺害事件、いわゆる狭山事件は届けられた一通の脅迫状に始まる。警察の捜査は被差別部落に集中し、一人の若者が別件で逮捕された。石川一雄さん、二四才である。二七年後の一九九〇年、石川さんは千葉刑務所の獄壁の中から無実を訴え、現在、二回目の再審請求を東京高等裁判所に申し立てていた。当時、取材で現地に入ると、犯人は被差別部落民だと言われ、ショック受けたと語る新聞記者。事件直後、石川さんの無実を信じ、支援に乗り出した元市議会議員も被差別部落民ならやりかねないという言葉を何度も聞いた。当時から狭山に住むある在日韓国人は「事件があるといつも警察がねらいをつけるのは被差別部落民か在日韓国人」だと語る。そして、次々に明るみになっていく新事実。犯行現場とされる雑木林のすぐとなりの畑で農作業をしていた人や家宅捜査の責任者だった元刑事の証言が、石川さんの自白とその強制捜査の問題点を暴いていく。こうしていきついたのは虚構を作り上げた権力者のみにくい姿だった。いま狭山では、家族の中心になって闘いを続ける兄の六造さんが一雄さんの帰りを待っている。そして獄中の石川さんは「勝利の扉は必ず開かれるものと確信している」と叫ぶ。1990年十月七日、石川さんは獄中一万日を迎えたのだった。