原節子
菊小路圭子
「緑の故郷」に次ぐ渡辺邦男演出作品である。
大正初期の革新期の一頁に咲いた恋物語。東京市電の争議の混乱の渦巻きに巻き込まれて進一と圭子の仲は裂かれた。進一は大学生であったため争議の扇動者と誤解されて検束されてしまった。圭子は没落する華族の娘であったが、進一が検束されたのも知らず約束を破棄したものと諦め、すべてを投げうって、わが家を救うため井坂伝助の許に嫁いで行った。彼女の悲壮な覚悟を知っているのは親友の桜町露子のみである。伝助は物質の豊富にまかせて世の女性に毒牙を磨く好色的な人物であったため圭子は幸福ではなかった。来る日も来る日も豪華な鳥籠に飼われて、金の珠の餌をあてがわれている人形にひとしかった。そればかりではなく、自由と権利まで金力のために剥奪され伝助の玩弄物であった。井坂の傲慢と搾取と奸策に耐えかねた井坂鉄工所員は労働者組合団結の下に決然と起ち上がった。進一はその代弁者として運動に参加し伝助に直接交渉を敢行した。その頃、この因習の鉄鎖を断ち切って伝助の許を飛び出した圭子は労働闘争資金募集のために寒風の町に立った。彼女の真意を解さぬ民衆は圭子を伝助の玩弄物として嘲笑する。進一と圭子は再開して誤解を忘れる。そして新しい時代のために雄々しき誓いを交わした時、不当な官憲のために進一は再び検束されて行った。が、圭子は泣かなかった。彼女の周囲には幾多の民衆と自由と正義が見守っていたからである。
菊小路圭子
圭子の母とみ
圭子の兄春夫
桜町露子
露子の父兼定
露子の母さだ子
田澤進一
井坂伝助
里枝
お浜
河田先生
菊小路家の家令本橋
伝助の秘書彦坂
谷井
津山
里枝の夫三造
婆やくめ
労働者風の男
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