奈良光枝
丸山綾子
「瓢箪から出た駒」に次ぐ千葉泰樹演出作品。原作は大映が筋書と脚本を募集した際の当選作品「新生」の映画化である。
せんさいな神経の持主の詩人貝殻一郎と、ぶっきらぼうだが熱情家の建築技師雁金走平、豪傑肌の発明家紙軽介の三人は南海の孤島で生死を共にして来た仲の良いトリオである。彼等三人は戦線で散った戦友の丸山から妹たちを守ってくれと言う遺言を託されて復員してから手分けして場末のボードビル劇場の唄い手をしている丸山綾子と理髪店に勤める妹の直子を見つけ出した。詩人の貝殻一郎は綾子の蔭に湯浅氏というパトロンらしい者のいるのを気にかけながらも彼女を売り出そうと尽力するのである。一郎の妹淳子は湯浅氏の会社の事務員であったが、彼女の会社に応募して来た最優秀の懸賞設計図の設計者雁金走平が兄の戦友であることを知り、飾らない彼の態度に強く惹かれてしまう。一郎は妹の心を察して微笑ましく見ているが、それに引きかえ彼の心に暗いかげを落すのは綾子の湯浅氏に対する行動である。この切ない一郎の気持ちを見抜いた紙軽介は彼女達を守り通すためにはどうしても結婚しなければ駄目だ。故に俺は直子さんと結婚する。と暗に一郎と綾子との結婚をすすめた。しかし一郎は軽介のように思い切った行動はとれないでいた。ある日直子は軽介から突然奇抜なあぶり出しの結婚申込状を受けて面食らうのであったが、彼らしい微笑ましい申出に好感を抱いて承諾したのである。一方、一部の売込がきいて綾子はコロナレコードで吹き込みをした。その帰途、彼女は湯浅氏の邸へ招待されるということを聞いて一郎は不安な気持ちに駆られる。邸では、綾子は湯浅氏から慕情を訴えられ彼を慰めるつもりでピアノに向かうが、醉のため自分を失ってしまう。助けようとした湯浅氏との間に一瞬の情熱が二人の理性を圧倒しかけた時、電話のベルが鳴って綾子はハッと気づく。ちょうどそれが兄の死んだ八時十八分であることを知った彼女は湯浅氏の許を逃れるように去った。雨の中をひた走る彼女を一郎は町角で呼びとめる。すべてを瞬時に諒解した彼女は、「八時十八分に……ベルがなりました」と喘ぎながら一郎に身を投げかけて泣いた。しとどに降る雨は、あらゆる粧おわれた愛情の残滓を洗い流してびしょ濡れになった二人の接吻!その夜、彼女の唄がヒットして彼女は一躍楽壇のホープとなった。湯浅土地建物のとりあげた走平の工事も完成する頃、万雷の拍手を浴びて綾子が新生の唄を歌った。
丸山綾子
妹直子
母孝子
貝殻一郎
淳子
雁金走平
紙軽介
湯浅氏
前川支配人
運転手松浪
実業家風の紳士
コロナの課長
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