水戸光子
香川京子
「こころ月の如く」のマキノ満男が製作に当り坪井与が始めての企画、東横京都としては開設第二回作品である。「花ある星座」の中西武夫の脚本で、演出は戦前「小市民」「試験地獄」「悦ちゃん」シリーズ、「北へ帰る」等の佳作を発表、また「蒼氓」の脚色者として著名であったクラタ・フミンドが終戦後最初のメガフォンをとる。「飛び出したお嬢さん」(松竹大船)の水戸光子、「かけ出し時代」(新東宝)の原節子が主演し、小夜福子、宝塚出身の新人八汐路恵子らが出演する。
香川京子の家に今宵は大勢の人が集っている。それは京子の女学校時代の先生や仲良しのお友達だった。婚約者中川と京子の結婚式が明日に迫ったのだ。そして叔母の道子の家に厄介になっている京子の、娘として最後の晩を朋友達に囲まれて過したいというわけである。学校時代の友達は懐しいものだった、水木つばさ、山城秋子、園田鈴子、由利しげ子、清水先生、京子の遠縁の娘松枝、総て優しく美しい女性である。皆が結婚を喜んでくれた。その中に一人、しげ子だけは喜ばなかった。京子には戦前武井という恋人があった。戦死したのである。激しい京子の悲嘆が薄れる頃、中川との間に愛情が芽生え今はもう本当の愛情で結婚しようと思っている京子だった。しげ子がそれを誤解していた、しげ子にも未だ消息不明の春岡という愛人があった。総てを春岡に対する愛情に浸っているしげ子にとって、京子の今度の結婚はどうしてもうなずけない気持だったのである。中川から京子に贈られたダイヤ指輪の紛失事件は、ひたむきに京子の結婚を妨げようとするしげ子の、幼い、それだけに激しい気持の現れから引き起したものだった、京子が自身の愛情を偽って結婚するんだとばかり思い込んだあげくの所業だったのである。しげ子の考え方は余りに純粋だったのか、皆には、少くとも乙女達には、その気持がわかるような気がする。
香川京子
香川ゆず子
香川道子
水木つばさ
山城秋子
園田鈴子
由利しげ子
追川松枝
清水先生
岡田かつ
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