若原雅夫
津島東三
小山いと子原作の『4A格』を前編(68分)として「第二の人生」(東宝)につぐ八木保太郎が脚色し後編(82分)は八木保太郎のオリジナル脚本で、「看護婦の日記」につぐ吉村廉の監督。カメラは「二人で見る星」につぐ峰重義が担当。主演は、「誘惑(1948)」(大船)の原節子「われ泣きぬれて」(松竹京都)につぐ若原雅夫で「旅裝」の市川春代「手をつなぐ子等(1948)」の杉村春子「幸運の椅子」の石黒達也「酔いどれ天使」の志村喬のほか菅井一郎、見明凡太朗、伊沢一郎ら出演する。後篇の公開は1948年6月8日より。1948年9月18日からは総集編(91分)が公開されている。
前篇--昭和六年、製糸工場では少しでも安価な優秀な生産を目ざして大わらわだった。それにはまず貧しい農家の娘を、ただのような労働賃金でかり出す方法がとられていた。津島製糸では糸のセリプレン検査を行い女工の競争心をあおらせる方法がとられていた。東京で展覧会が催され製糸の実況をみせるのに選抜されたのがいつも成績第一位のしづ江と古参のおスガだった。若い工場長津島と共に上京したしづ江は、ふとしたことからとり返しのつかぬ、あやまちをおかす結果になってしまった。それからのしづ江の成績は下る一方だった。片時も恋人能代と津島の顔がさくそうし、良心のかしゃくに責められた。しづ江はすでに妊娠していたのだ。気の弱い能代はそれを知ると津島の援助をうけて結婚し、しづ江を救おうとした。工場内では検番の職柄をカサに女工をだます男、女工もまたへつらうためには貞操さえもおしまないほど乱れていた。このように女工がつぎつぎとだまされるのも、女工がだまされるのでなく、貧乏に育った女工の心がそうさすのだ。 後篇--山すそに小さく区切られた越後の村落、その故郷へしづ江は帰ってきた。母トメにすすめられ身持ちの子供を流すという鬼湯にも入ったが、結果は無だに終った。しづ江は遂に工場をクビになった。工場を追われた女工の流れていくところは、結局都会の裏町だった。貿易輸出品として政治的意味を持つ生糸の生産、女子労働賃金のさく取と、女工を無能者の如く扱う検番たちの意見に反し進歩的な考えをもつ若い津島は、アカのけん疑で拘引され間もなく追放された。都会に流れ出たしづ江は、政治運動家と自称するいかさま師の山下にだまされ寸前のところで女給のつや子に助けられた。しづ江を追い回すかつての恋人能代は気の小さい男で強く生きようとするしづ江にはけん悪さえ感じられる。何もかもふりすてて更生したしづ江はつや子の世話でバーに働くようになった。そこでしづ江は津島に再会したのだ。
津島東三
脇田友一
佐藤太市
能代清治
山下雄三
森しづ江
木村スガ
女工みつ
女給つや
柴田さだ
田口とみ
森トメ
特高係大熊
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