汐見洋
徳山理太郎
大日方伝が自身製作第一回作品で、原作をも担当している。「ホームラン狂時代」の山崎謙太と島耕二が協同脚色で、「銀座カンカン娘」の島耕二が監督に当たる。撮影は「銀座三四郎」の安本淳が担当。主演には「帰国」の大日方伝とその一家が出演し、「歌の明星」の轟夕起子、「人生選手」の小林桂樹、新人香川京子らが出演する。
徳山家ではおじいさんの理太郎と、若旦那の周介、その奥さんの藤子、若旦那の弟の勇二、それから子供たちが四人ばかりいるという大家族である。徳山家ではわずかな農を営み、多くの家畜を養って生活していた。ところが隣の藤枝家では父が船長をしていたが船と運命を共にして、母の千栄子と娘の茉利子、弟の道夫の三人暮らしで売り食いをしていた。その上母の千栄子はお照し教にこってしまって、この方に貢ぐ金がまた大きかった。娘の茉利子はこの様を見ていたが、弟の道夫がふとしたことで足をケガして今もって松葉杖にすがっているのを見ると母の気持ちを正面から非難することが出来なかった。とにかく迷信にこって遂に隣家と絶交にまで発展してしまった。しかし隣家の徳山家では平気であり、一家和気あいあい、楽しく過ごしていた。勇二は茉利子を励まし一日も早く道夫の足を平常に戻そうと二人で努力しいてた。ところが、母の千栄子がお照し教のお告げによると言って弟の山田の事業資金を作る事を理由に大切にしていた道夫のモデルシップを売ってしまった。それからというものは道夫は妙に意地気てしまい、いたずらばかりしていた。これを知った勇二は、それと同じモデルシップを作ることに決心し、道夫と二人でその製作にかかった。一変したように道夫の性格が良くなった。不思議に思った茉利子はこれを知って感激した。そしてついでに母の行き方を是性して自分のピアノを売って、その資金をもとでに“うさぎ”を養うことに決意した。ところが依然母はお照し教に熱中していて娘のいう事を聞かず、かえって勇二を非難しにやってきた所、道夫と勇二のモデルシップを囲む姿を見てふと考えてしまった。その上道夫がモデルシップが完成したあまりの喜びに歩けなかったのが杖なしで見事歩いたのである。やがて両家の人々に囲まれたモデルシップは静かに進水式をあげた。
徳山理太郎
徳山周介
徳山勇二
周介の妻藤子
周介の長男安吾
周介の次男龍介
周介の長女玉子
周介の次女洋子
藤枝千栄子
藤枝茉利子
藤枝道夫
山田
お照し教師
古道具屋
正次郎
井戸屋源造
巡査
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