榎本健一
川上兼六
「お染久松」の渡辺邦男が古川良範、池正夫と協力して脚本執筆、自身監督に当たるエノケン喜劇、撮影は「お染久松」の平野好美、音楽は古關裕而の担当、出演者は「お染久松」の榎本健一、「東京カチンカ娘」の清川虹子のほか旭輝子、柳文代、森健二などに、あきれた・ぼういずの益田喜頓、少女ブギ歌手美空ひばり、往年の日活二枚目として懐かしい広瀬恒美といった面々、なお特別出演者として歌手に長門美保、菊地章子、素人のど自慢出演者に三木鶏郎グループの丹下清子、あきれた・ぼういずの坊屋三郎、山茶花究などが出る。
川上兼六は後家のおわかの家に世話になっている床屋職人、村一番の歌い手でラジオののど自慢を聞いて東京に出たくて仕方がない。その気持ちを知ったおわかとお君の親切で旅費をもらって東京に出るが、のど自慢は見事に鐘一つ。悄気返ってスタジオに残った兼六は鐘係りの善さんの家に厄介になり、彼の世話で放送局の雑役夫に雇われる。そして同じ放送局勤めである善さんの娘晴江と兼六は段々思い合う様になって行った。雑役から臨時鐘係り、お好みニュースの投票で小口放送局のアンテナの天頂に上ったりして段々人気者になって来た。兼六がある日ガラス拭きをやっている時に受付へ兼六の村の衆一同が訪れて来た。「歌手の川上さんに会いたい」という、彼は田舎へは合唱隊に入ったと嘘をついていたのだ。村の者は彼の歌う所を見たいと村長はじめおわかさんなどが来たのだ。見つかるまいと逃げ廻った兼六は本番中の“陽気な喫茶店”のステージに飛び込んでしまい、その場の勢いで珍妙な歌と踊りで喝采を博す。全国に申し訳ないと村に帰った兼六はラジオも聞かずに床屋をやっていたが、ある日ラジオの音楽「陽気な喫茶店の新人、川上兼六さん行方不明、全国ファンは彼の再登場を熱望しています。」あっと驚く兼六、そこへとび込んで来たのは東京行きの切符を持った恋人晴江さんであった。村人に送られて峠の道を楽しげに行く兼六と晴江の二人姿。
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